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影……それはどこにでもある。どれだけ活気にあふれていようとも……いや、活気にあふれて太陽の光が強く降り注ぐ栄光を享受してる場所にこそ、より深く、そして濃い影ができるというものだ。
「お疲れ様です」
そんな風に女が言う。黒髪で地味目な女だ。けど……俺は緊張する。見える部分にはこの女一人しかいない。けど……向けられる視線は一つじゃない。
護衛がいたるところにいるんだろう。何か下手な行動をちょっとでもとろうものなら……これから俺たちはこいつらに狙われ続けることになるだろう。
LROにとって死はただリスクでしかない。だってすぐに復活できる。だからここでは死を恐れる必要なんてことはなく。死は一つの手段だ。そうやって俺たちは情報を持ち帰ったわけだからな。
もちろんだけど、リア・レーゼの近くの村とかにもテア・レス・テレスの息がかかった奴がいるだろう。でも、あんまり情報を広めてほしくないのか、彼女は直接の情報の受け渡しを要求してきた。
「大丈夫ですよ。皆さんちょっと過保護になってるだけなんです。手出しはさせません」
そういってくるのは会長だ。テア・レス・テレスのトップ……LROのチームの頂点に立つ女といっていい。そんなやつだから、護衛がいるのはしかたないだろう。それにこれだけ主張してるってのは、きっと警告だ。本当なら護衛がこんな直接的な視線をぶつけてくる……なんてことはないだろう。
そんな事してたら失格だし。最近まで会長にはきな臭い噂があった。だからかもしれない。まあよく知らない俺には……彼女は普通に調子良さそうにみえる。体調が悪いなんてことはなさそうだ。
「それで情報ですけど……」
「これを渡せばいいのか?」
そういって俺は懐から紙をとりだした。あれだけ色々とボロボロになった体に入れてたはずなのに、この紙事態はとても綺麗だ。インベントリに入れてたのなら、これも十分理解できる。だってインベントリの中なら外の影響は受けないからだ。
でもこの紙はインベントリには入れてはいけなかった。そういう要請があった。眼の前の女から。だからそうしてた。ならば汚れとかついててもおかしくないのに……紙は綺麗だ。
「ありがとうございます」
そういって会長が紙を受け取る。その時、紙に金色の文字が浮かび上がった。