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「 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」 」
二人で走る。俺は再び戦いに戻るために。そしてもう一人は……俺はジェスチャーコードを使って腕に手裏剣を取り出した。とりあえず気を引くためにそれを投げる。適当に投げてもある程度軌道を修正してロックオンした相手に向かってくれる便利なアイテムである。
そこそこ高いし、アイテム扱いだから、手元に戻ってくるってこともない。だからちゃんと一個一個を回収しないと再び使うことができない。
そこらへんは面倒だ。けど適当に投げても大きな弧を描いて対象にあたってくれるのは意表をつける……という点ではとても重宝する。
まあわかってるプレイヤー相手には防がれるが……でもそもそも意表とか、気をそらすために使うんだから、これに反応するだけでも価値がある。
実際でっかい月人はこれに反応することはなかった。寧ろザクザクと背中や腕にささってから、こっちに気づいた。どんだけ鈍いんだよ!? ――と思ったが、それからは怒ったのか、こっちに向かってのっしのっしと走ってきた。二足歩行をしてると遅い。
あいつは自分が普段四足で歩いてるのわすれたんだろうか? けど都合がいい。俺は隣を走ってる奴と視線を交わす。そして大きく感覚をあけた。
それによって月人がどっちを向くか……それはもちろん俺の方だった。攻撃を当てた俺にヘイトが向いてるのは当然だろう。
そしてそれを利用して、もう一方が攻撃を仕掛ける……とかするのが普通だろう。ヘイトを交互に行き来させることによって、攻撃を分散させることができる。
でもそんなことはしない。寧ろもっとこっちに! ということでさらに手裏剣を投げた。わざと大きく外す。それはむやみに敵に撃ち落されないための処置だ。正面に投げるなんて愚策だろう。
だからこそ大きく外す。普通ならそれはただの暴投だ。けどこの手裏剣は勝手に対象に向かって飛んでくれる。だからこそ、まずは大きく外すのだ。これによってこの月人の意識は手裏剣から外れる。正面からは俺がナイフを構えて切りかかる。それに対して、こいつはただ突進を選択する。本当なら避けたいくらいだが、一番強い毒を生成して、ナイフの刀身が紫に光る。
「ぐふっ!?」
正面からそのタックルを受ける。だができうる限りその衝撃を逃した。そしてそのまま二本のナイフを上から突きさす。さらに大きく回ってた手裏剣もやってくる。うまく調整してた手裏剣はこの巨大な月人の足の健の部分に刺さった。健が切れた……まではいかないだろう。けどいきなり動きが鈍くなったことで、月人はバランスを崩した。
ズシャアアアアア……
と盛大に転ぶ。そしてその隙にもう一人はこの場所の端っこまで走って行って、そのまま、外側へと飛んで消えた。狙い通りだ。