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「俺たちの役目を忘れたか?」
そんな風にいわれる。けど、そうじゃない。そうじゃないんだ。俺は首を振って、彼の前に立つ。そして背中を見せていった。
「ちげーよ。ただそれも俺たちの役目だとおもっただけだ。あいつの情報を出来る限りえる。それも必要だと思わないか?」
「それは……逃走ルートはどうするんだ?」
「それは、二手に分かれればいい。俺たちが奴を引き受ける。お前は……あそこから飛び降りてみるのもいいかもな。なにせ出入り口にはもう一体いるし」
「はぁ、リーダーがそう決めたなら、やってやるよ」
どうやら納得してくれたみたいだ。ここはLROだ。だからこそ死は終わりじゃない。リアルでは絶対に死ぬことなんてできない。それを選択肢に織り込むなんて不可能だ。けどここは違う。死は終わりじゃない。
死さえも利用できるのがここLROだ。依頼人が欲しがってるのは情報だ。ルートもそうだけど、この特殊な月人達……その情報にだって価値はある。なにせこのタイプの月人は見たことない。
そもそも月人の進化の仕方は様々だ。それぞれに特徴がある。だからこそ初見はリスクがある。でも俺たちがこの月人の情報を持ち帰ることかできれば、それはここを突破するのに必要な情報になりえるだろう。
なにせ……目的の場所に行くにはきっとここの仕掛けを解く必要がある。それはこの月人の可能性もあるが……
(でも、この月人は月が活性化してから出てきた奴で、リア・レーゼはサービス当初からあったからな。月人を倒すことで上への道が開けるってギミックはおかしいか)
冷静に俺はそう思った。つまりは月人は後付けだ。きっと重要な施設に行くための手段がここにあるって月側もわかってるから、ここに防衛のためにボスとしてこいつを配置してる……と見た方がいいだろう。
そう考えるとこいつ等を倒したところで意味はないかもしれない。でも、こいつらをどうにかしないとここからの道を落ち着いて探すこともできないのは確か。いやがらせ……にはとても効果的だ。
だからこそ、こいつらの情報は大切だろう。もしもここから先に進めなくて詰んだら? 実際何度も突撃はできる。でも……一刻も早く誰もが世界樹を取り戻してほしいと思ってる。
俺は詳しくは聞いてない。でも、一度攻めだしたら、月側にだってきっと気付かれるはずだ。ここに来るまでには時間だってそれなりにかかる。
そうなると、月側だって対策するかもしれない。それなら、できうるなら一度でここを突破したいハズだ。そのための情報を俺たちが得る。
ゾクゾクするじゃないか。俺たちのような影の者の活躍が趨勢を決する一助になるんだ。