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これ以上上にはいけない。だが……世界樹は規格外に大きな木だ。だから無理やり登ろうと思えば、できないわけじゃないだろう。それにLROでは身体スペックも高い。リアルだと壁を伝うなんてなんてできないだろう。けど、LROならある程度は無理やりできたりする。大きな枝や葉をうまく使えば行けそうだ。でも……
(それは特殊なやり方のはずだ)
そう思う。だって建物は立派な面構えであるのだ。ならば、なにか行く方法はちゃんと有るはずだ。それにここ、リア・レーゼにいるのは基本モブリだ。モブリは手足が短いから普通の体型の人達よりは身体的にはスペックは低い。まあ軽いし身軽だから、それをうまく利用してる人もいたりはする。
でもNPCではそれをやってるのは見たことない。大体サン・ジェルクやリア・レーゼのモブリは魔法主体の戦い方をする。そんなモブリたちが住んでる訳だから身体能力で上り下りする……ようにはなってるとはおもえない。
「あれはここのボスッてことなのかな?」
「月側も対策してないわけはないか」
なにか重要な施設には一応番人をおいておこうという気なんだろう。俺達は影に潜んでるが、流石にこの広い場所では影で隠れそうなところは限定的だ。流石にあれに見つからずに無理矢理にでも上に行くのは無理だろうし、なにか仕掛けがあるとしても、このままでは動かすこともできないだろう。
ノッシノッシ……そんなおもそうな音を出してる化け物がここにはいる。通常の3倍は大きい月人。でかいから二足歩行が無理なのか、そいつは手もついて四足で歩行してる。そしてその背……というか、肩甲骨あたりに乗ってる月人が一体。
下のでかいのは筋肉ムキムキの力強さ満点だが、上のやつはなにやら毛? が大量に生えてて顔や身体をその長髪が覆ってる。そして忙しなく顔を動かした。まるで犬が周囲をクンカクンカしてるかのように……すると上に乗ってるやつが手に持ってたムチ? みたいなのをいきなりしならせる。
パチーン!!
という小気味良い音が響く。すると……乗られてるでっかい月人がこっちに向かって突進してくる。危険感知のスキルがビンビンと反応してる。これは……
「全員撤退だ!!」
バレた。それを判断して素早く後退を選択する。