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耐えたことはどうやら正解だったようだ。変な杖なのか、それとも槍なのかは分からないが、それをもった月人がこちら側に来たが、周囲を見回した(いや、奴らに目はないが)――だけで再びあの布を頭にかぶせてる奴の所にいって何やらいってた。多分報告してたんじゃないだろうか? きっとこんな感じだ。
『異常ありませんでした!』
――てね。それにあの布を頭にかぶってるリーダー格……なのか、ちょっとした小隊長的な立場なのかは分からないがそいつはそれに納得したようだ。二人して背中を見せてどっかにいった。
「ふう……」
そもそも目を持たない月人は俺たちとは違う感覚で世界を見てる――と思われる。なので下手にかくれる……だけでは意味がない。奴らはそれこそこちらの存在みたいなのを感知してるとか言われてる。
ならば今どうして見つからなかったのか? となるだろうが、月人の特性は色々と検証が進んでる。だからやり過ごす手段というのは見つかってる。奴らにはこちらを感じる感覚があるが、それだけではとても曖昧なんだ。それを補助するために聴覚や嗅覚を使ってる節がある。
だからそのどちらをもしっかりと対策をすれば、気づかれずに済む。俺たちのような隠密を生業にしてるような奴らは音やにおいを封じるスキル……なんてのは必需品だ。存在を消す……というのは今の所発見されてないが、存在感を薄くするとかならある。
だからそういうのを駆使すれば、完璧に奴らがこっちを捕えない限りは気のせい……と思うのはあり得るのだ。
危なかったけどな。やっぱり進化をしてる個体はそこら辺の五感も強化されている場合がある。だが、俺たちも影を生業にしてるからだろう。こっちのスキルの熟練度が上回ったみたいだ。
きっと気配を僅かにでも感じてたんだろう。あの布を被ってる奴は。だがそれでも確信には至らなかった。それは影冥利に尽きるというものだ。
「いくぞ、慎重にな」
俺たちは再び進みだす。このミッションを成し遂げる為に。そして様々な苦難を乗り越えて、目的の場所を視界にとらえた。
「これ以上はいけないな」
「けど道はある筈だよね?」
「そう聞いてるが……」
ギリッと奥歯を噛む。目的の場所は内部を進んでこれる最上階……そのさらに先にあっるようだ。ここは舞台のように広く、半円の平たい場所にいくつかの石像……いや違う。木像なのか? そんなのがある。もしかしたらあの木像をどうにかしたらここのギミックが動き出す……とか有るのかもしれない。でもそこまでは聞いてない。
一応ここまでこられたらあとはさらにいくつのルートを選定しておくのが大切だろう。それに脱出ルートとかも一応確認しておきたい。けど……その舞台には月人に乗った月人がいるんだ。何言ってるのかわからない? 俺もわからん。