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「今の貴方の立ち場は盤石ですか?」
「それは……我は偉いが、我の立ち場を狙う奴らはたくさんいる」
「そうでしょうね」
モブリの代表は悔しそうにそういった。本当ならこいつの気持ち的にはなんで他の奴らが自分に意見するのかわからないのだろう。だって彼は自分が尊い存在だと本気で思ってる。そして偉いとね。だからこそ、今の地位にいるのは当然……という思いなんだろう。
そしてそれは周囲がそう思ってることも当然……ということだ。だからこそ、反対するものがいて、自身の地位を脅かす存在がいるのがわからない。なにせ彼にとってはそれは当然だから。
でも権力なんてのはそんなものだろう。誰もが求める……とはいわないが、心には野心があるものだろう。そしてそんな野心が頂点を目指すのは何もおかしなことじゃない。俺的には頂点なんて煩わしいだけ……なんだが……いや俺のように中途半端に真面目にやるからだめなのかもしれない。
こいつの……このモブリの代表のようにただその地位に座ってるだけなら楽なのかもしれない。きっとこいつの場合は実務的な事はすべて下の方に丸投げしてそうだし……たしかにそれなら地位の椅子に座ってるだけでいいのかもしれない。
それなら周囲からの尊敬を自分は受けるだけでいいのかもしれない。本当なら地位が上がればそれと同じだけの責任とか義務とか……そんなのが増えるんだけどな。それが当たり前で、人の上に立つ者の当然の責務だろう。
それがないやつが人の上に立ってもろくなことにならない。そんな風に思ってるわけだ。中途半端に現代を生きてきたから、そういう価値観が育まれてしまってる。いろんな作品、サブカルチャーで沢山の物語を体験するうえで栄枯盛衰を経験してるからだろう。
だからこそ上に立つ責任を、立ったこともないのにわかってる。なんとかやろうとしてしまう。だから俺は大変なのか……けどこのモブリの代表はそうじゃなく、自分の経験と価値観の中だけで生きてきたんだろう。
LROはそんなに娯楽が豊富……ということはない。世界観的には便利なものも多いけど、ずっと魔物と戦ってきた世界だからな。街と街が交流するのだって一苦労なのだ。リアルのように安心安全に移動できるってわけじゃない。
その分、やっぱり閉鎖的にはなってしまうのかもしれない。そして交流が生まれないと変化とかがおきにくくなって、発展とかも遅れるのかも。やっぱり発展には刺激が必要だと思うんだ。
その刺激は全く違うところからもたらされるものじゃないだろうか? でもLROはそんなに気軽に誰もが街から街へと移動できるってわけじゃない。そうなると変化の為の刺激が少なくなる。
まあ今はとても大きな変化が起きてると言えるけど……この気に今の体制を崩壊させて新たな体制を作ろうとしてる勢力とかいるのかもしれない。実際……
(こいつが上に立ってていいわけないもんな)
それである。