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「けど考えてみてください。あなたが前に出る意味を」
「前に出る意味? そんなのリスクしかない。我は尊い存在なんだ……」
小さいな声量だけど、確かにモブリの代表はそういった。一応それで言ったら、ここにいる存在はそれぞれの種にとっては皆が一応に尊い存在であるということになるけどな。
だって皆が「代表」という立ち場なんだ。俺は自分の事を尊いなんて思ったことはないが、それでも他の存在から観たら、代表という立ち場に収まってる俺はきっと尊い、位の高い人物だろう。
だからその立ち場に甘んじて前にでないってのは甘えというか? いいわけでしかない。それに今、一番世界樹の奪還を求めてるのが誰か……いわれたらそれはモブリだろう。
実際は皆が……それこそ人種だってエルフだってウンディーネだって、そしてプレイヤーだって世界樹を求めてる。けどその中でも、最も世界樹を求めてるのはモブリだと思う。特にモブリの上層部にはその気持が強いんじゃないだろうか? 一般のモブリ達は実際そこまで……なのかもしれない。もちろんモブリは全体で世界樹信仰が強かったとは思う。だからもちろん上から下まで世界樹を求めてるのは間違いないだろう。
でも上と下でその求める理由というか? 根本の気持ちってやつが違うと思える。まずこのモブリの代表もそうだけど、純粋な気持ちで世界樹が奪還したいと思ってないよな?
世界樹を渇望してるのは上も下も一貫してるが、彼を見る限り、世界樹を守ることで得られる権力……それをモブリの上層部は求めてるように思える。名誉と栄誉が欲しくて、それが得られるのなら、実際世界樹じゃなくてもいいような?
それに対してモブリの普通の人達はちゃんと世界樹を信仰してる。それこそリア・レーゼの人たちはそれが強いだろう。純粋に【世界樹】そのものを求めてる。その違いがあるような気がする。
「でもリスクの先のチャンスもあります。今、世界樹が奪われたことでモブリの立ち場は弱くなってます。けど奪還する際に一番に活躍したのがモブリなら……いえ、あなたならどうなるでしょうか?」
「一番の活躍?」
「はい、私達……いえ、他の種では世界樹を本当の意味で奪還できないんですよね? でも貴方なら世界樹を取り戻せる条件を満たしてるんじゃないですか?」
「それは……我は尊いから……な」
どうやら彼でも世界樹との対話は一応出来るらしい。流石は尊い血筋。
「御子様は今はもうこちらにいません。それもモブリの責任になってます。でも、御子様がいなくても世界樹を取り戻せたら、それを成したのが貴方なら、沢山の尊敬と称賛が貴方に集まると思いませんか? リスクの先に、誰もから認められるチャンスが有るんです」
「お……おおお!!」
きっとその光景をモブリの代表は想像したんだろう。声が大きくなっていく。それに顔もなんか紅潮してた。