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「でもほら、我は尊いからな。うむ……危険は犯せない。なにせ今、我が種には我よりも尊い血はない。わかるだろう? それだけ我は大切な存在なのだ」
「なるほど……」
「うむ」
胸を張ってるモブリの代表。確かに彼はきっと尊い血を受け継いでるんだろう。まあそうい設定なんだなって……思う程度だけど。だって現代日本で『血』を重んじてるやつなんているんだろうか? って感じだ。せいぜい皇族くらいだろう。その血だけはきっと尊いとか高貴とか思えると思う。
けど……ね。皇族なんて関わることなんてないから、やっぱりどうするのが正解なのかわかんないよね。それに結局はこの眼の前のやつは自分的には高貴……に思えないし。その体から高貴さがにじみ出てるのなら、それもできたのかもしれない。それこそ創作物の方でみるお姫様とか王族……それがちゃんと描写できてる作品なら高貴さを絵や文体からだって感じる事ができるだろう。
けどさ……こいつにはそれがない。こいつがいう高貴さというのは「自分は偉いだぞ!」――といってるだけだ。それが高貴? 本当にそうだと思ってるのか? 高貴ってそういうものじゃないと思う。
むしろ言葉にして喚くこととは対局ではないだろうか? そこで会長はその言葉をバトンタッチすることにしたみたいだ。
「と言ってますが、アルテミスの高貴なエルフ様?」
「ふん、高貴というなら、その責任を果たせ! 皆が認めるから身分はあるのだ。そして認められるには喚くだけでは意味などない。行動で示せ。高貴さは血に宿るんじゃない。高貴な家柄というのは血ではなく責任を受け継いでるんだ!」
おおーパチパチパチパチ、と思わず拍手したくなった。最初は権力を笠にきた猪突猛進な君主なのかと思ってたアルテミスの代表。けど、彼にはちゃんと責任もあり、そして今を判断出来る頭もある。根本的にこのモブリの代表とは違う。
確かにアルテミスの代表になってるんだから、このエルフの血筋だって悪いものじゃないはずだ。プレイヤーが代表になってたら、血筋なんてないが……NPCならやっぱり順当に家柄がいいやつがその種のトップになってるだろうからな。
だってリアルでもそうだけど、権力を得るには地盤が大切だ。そして地盤を持つのはやっぱり有力者なわけで……そうなると名家となると昔から連なってるんだから、それだけいろんな所に繋がりができる。それが地盤だろう。だから当然だけど、このエルフの代表だってアルテミスでの名家の出……なんだろう。
「もちろん、絶対について来てくださいとは言えません。リスクも当然に理解してますから」
厳しいことをいわれた後にこうやって甘い言葉を囁く。それによってモブリの代表は比較的するっと会長の言葉が耳に入るようになってるようだ。これは二人共をうまく会長がころがしてるってことなのかもしれない。
俯瞰してみると恐ろしいことをやってる。