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「それは大丈夫だ……なにせ我らの血筋は特別だからな!」
「特別ですか? 確か、長く続いてるんですよね?」
「ああ、我が家はモブリの中でも最古の家だ。だからこそ、特別な血筋である!!」
ムッフー、という感じでモブリの代表が胸を張ってる。自身の地位の高さ……それが家の家格にある……と彼はいってる。まあそうだよな……と俺は納得した。だってどう観てもこいつはそこまで有能じゃない。頭だって……もしかしたら試験の成績とかは取れるやつだったのかもしれないが、今のこういう場所での頭の良さってやつを彼は一切見せてない。
むしろ……愚か、と言ったほうがいい。でも彼はモブリの代表という立ち場に収まってる。モブリの国はサン・ジェルクとリア・レーゼの二台体制だった。だからもしかしたらサン・ジェルクの代表がアホでも愚かでも、リア・レーゼの方の代表がちゃんとしてたからなんとかなったのかもしれない。
逆だったときだってあっただろう。けど今やリア・レーゼは滅びたと言ったといい。一応そこにいた人たちはプレイヤーたちの奮闘もあって大半はサン・ジェルクへと逃げることができたらしいが……でもリア・レーゼの上層部はきっと責められたり、責任を取らされたりしただろう。だからきっとサン・ジェルクでリア・レーゼと同じような権威を振るうなんてできないと思われる。
そうなると、サン・ジェルク勢が勢いをます。つまりはこいつが天狗になる……ということだ。まあそれでも最初は形見狭そうな感じになってたのは色々と言われてたからなんだろう。
今はなんかやりきった……みたいな感じになってるからすでに肩の力も抜けて、尊大な態度が戻ってるけど……
「あなたがいれば、世界樹との対話は可能……ということですか? なら、前線に参加してくださるんでしょうか?」
「ふぇ!? え? あー、前線って戦場の?」
「そうですね。なにせ目指すのはその世界樹の内部になるので。そこに行く場所……がどこにあるかによりますが、外周にある……なんて事はありますか?」
「それは……ない。その場所は特殊だからな。リア・レーゼでも一部のものしか知らないだろう」
「それならば知ってる人が同行していただくのが一番ですね。そして、その人が世界樹と対話できるのなら、よりベストです。さすがにお供をゾロゾロと連れて行く……というのはできませんし」
「う、うむ……まあ、そうだよな。うん……」
とても彼の顔色は悪い。戦場に……いや、前線に行くことになる――というのがとっても嫌そうだ。こいつ後方でふんぞり返るのはきっと良くても、前線で汗を書くのは嫌なんだなって思った。