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「大切な事なんですがいいですか?」
「うん? なんだ?」
「これはとても大切なことです。世界樹を奪う……いえ取り返す最終的な結果。それを得るために、取り返したとなるにはどうしたらいいんですか?」
そんな質問を会長はモブリの代表へとした。そこでふと思った。それは……確かに……と。だってその場所から月の奴らを追い出したら世界樹を奪還したとなるのか? それはなんか違う気がする。世界樹が月に奪われたとするのは、その大地を……リア・レーゼを取られたから世界樹の支配者が変わった……ではないと思うんだ。
もしもリア・レーゼの大地から月の奴らを全部追い出したら世界樹を取り戻した――となるのなら、それはある意味で分かりやすい。だってひたすらに世界樹にはびこってる月の奴らを倒していけばいいからだ。大変ではあるし、時間もかかるだろう。けどわかりやすくはあると思う。月の奴らを追い出して世界樹取り返す……けど、そうじゃないって会長は思ってるということだろう。
「これは我らの秘中の秘だが、いうしかないか」
そんな風にもったいぶってモブリの代表が口を開く。やっぱりなにか世界樹を本当の意味で取り返すための方法というか手順があるみたいだ。今世界樹はこの大地の生命ではなく、月の者たちにその加護を与えてる。それはある意味で俺たちが世界樹に見限られたともいえるし、世界樹の認識が変わったともいえる。それを正すことこそが、『世界樹を奪還する』――ということなんだろう。
ただ、リア・レーゼにいる月人たちを倒せばいい……ということじゃない。
「世界樹の内部、そこに行って世界樹との対話をするしかない」
「世界樹との対話ですか? それって世界樹の御子が必要なんじゃ?」
「それは……」
ぐぬぬ……という感じでモブリの代表が悔しそうに歯噛みしてる。どうやら会長の言葉はそのとおりらしい。そっか、だからこそ、世界樹の御子はリア・レーゼでトップに立ってた。いや、今の御子は形だけ……だったみたいだけど、それでも立場的には世界樹の御子はリア・レーゼのトップだった。それには世界樹と対話できるから……ということなんだろう。
けどこっちにはローレの奴がいたわけで、それを会長は聞いてておかしくないと思う。わざとその話を引き出したのか?
「御子がいなくても、大丈夫なんでしょうか?」
そこは大切なことだよな。だって頑張ってそこまでたどり着いたのに、世界樹と対話できずに終わったら意味がない。けどこっちには御子がいないんだ。それでも大丈夫なのか? は誰もが気になるところで、それをあいまいにして作戦を決行するとはできない。