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「テア・レス・テレスが求めるのはヴァレル・ワンのそれぞれの都市での使用許可です。この作戦がうまくいったあかつきにはそれを許可してほしいです」
「そんなことでいいのですか?」
「はい」
人種の代表が会長に確認してる。確かにそれは確認したくなるようなことである。そもそもが俺達のスレイプルの移動要塞ではいくら許可を出そうがヴァレル・ワンで移動できそうもない。そもそもが上下の階層構造だし、それならヴァレル・ワンで移動するよりも徒歩の方が早い。
だからこっちにとっては何も問題ないというか? そもそもが家の国ではどのみちヴァレル・ワンで移動するやつはいないだろう。けど他の国は、広かったりするところは確かにヴァレル・ワンで移動できるようになったら便利かもしれない。
ヴァレル・ワンは基本的に町中を出て、フィールド上で使うっていう使い方が一般的だ。俺達プレイヤーはインベントリがあるから、ヴァレル・ワンも普段はそこに入れてられる。だからスペースを取るってことはない。でも町中で使うってなったら、きっとそのうち、街中のNPCだって「あれがほしい!」ってなるだろう。
大きな町中の基本的な移動手段は馬車だ。馬車は金がかかる。それに馬は動物だからな。無理やり稼働させる事はできない。色々と馬はデリケートないきものだ。まあここはゲームだし、馬以上の運搬能力がある動物もいる。貴族とかお偉いさんはそういう特殊な魔物よりの動物に馬車をひかせたりしてたりする。
けど一番普及してのはやっぱり普通の馬が引く馬車だ。それで生計を立ててる人も、そして組合とかそういう枠組みがすでに出来上がってるだろう。そこに電撃的にヴァレル・ワンという移動手段が登場する? どうなるか? 俺にはよくわからないが、もしかしたらただそんな事……では済まないことが起きるかもしれない。
会長の要求は金銭的なものでも、物欲的なものでもない。ただの使用許可……それはここにいる代表たちが「いいよ!」といえばそれだけでいいことだ。だから単純なやつはすぐにそれくらいなら……といってる。
まあ一番に言ったのは俺だけど。なんか視線が会長とぶつかったんだよね。あれはきっと悩んでる……というかどうしていいか? 真っ先の発言をためらってる感じの代表たちを焚き付けてほしいという視線だった。だからそれに乗っかった。
「わかった。それでお前たちの協力が得られるのはならスレイプルの代表として許可しよう」
――といった。だって俺達スレイプルには、影響ないし。それに続いてすぐに続いたのはモブリの代表だ。
「我ももちろん許可しよう。良かったな我の懐が広くて」
「感謝します」
絶対にモブリの代表は俺が真っ先に動いたから勢いでいってる。負けられないっていう対抗心でだ。モブリは絶対にこいつを交渉の場で一人にしないほうがいいなって思った