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「そうなんです。一つ二つの誇りを譲ったとしても、沢山誇りを持ち続けることができます。だから世界樹をモブリだけで管理しなくてもいい。すべての種への開放……それがどんな風になるかわかりますか?」
「どんな風になるか?」
「はい!」
嬉しそうにそういう会長。実際、あのモブリの代表は世界樹をほかの種に開放することがどういう影響を与えるか……きっとわかってない。今までがモブリだけで管理してきたから……そしてそれがモブリの最大の誇りだったから……という理由で反対してるんだろう。だから会長はその今まで……を変えようしてる。そしてそれが具体的にいいこと……と思わせることができたら……
「確かに一時的には大変なことがあるでしょう。同じモブリの人たちに責められるかもしれません」
「それは……」
あれ? 俺は会長が良いこと……メリットだけを伝えてモブリの代表をその気にするんだと思ってた。だって良いことというのはとても耳障りがいい。そして単純な奴ほど、効果的だ。そしてそれに彼は……モブリの代表は完ぺきに当てはまってる。
「けど……あなたはすべてのモブリの代表です。そうでしょう?」
「それは……そうだ。我がモブリの代表だ!」
「なら決めるのはあなたです。最初は批判が起きるかもしれない。でも、あなたがそのリーダーシップを示せば、ちゃんとわかってくれます。困難に逃げずに立ち向かう。解放された世界樹……そしてそれをなしたのは……あなたです」
「私が……成す?」
「はい、ほかのモブリにはできません。あなたにしかできないことです」
それはきっと立場的に……な意味だと思う。でも……今の感じだと、彼が……彼だけが特別だから……みたいな感じにきこえる。そしてそれはそういわれたモブリの代表が一番そう感じたんだろう。彼は会長の笑顔を見て、そして自分の手を見る。その小さな手を見つめつつ、「私が……」――とかつぶやいてる。そして上を向いて再び会長を見た。
「私が……我がやってやる!!」
そう彼は宣言した。まるで自分の意志で決めたような物言い。なんか彼の中では壮大なBGMとか流れてそうだけど、うまく誘導されてるからな。それからモブリの代表は会長から周囲の種の代表たち……そう俺たちに視線を移して宣言する。
「モブリの種の代表である我が……そう我が宣言する!! 協力を頼みたい!! 世界樹の管理を他の種にも開放する!!」
――とね。こいつ、自分が決めたってことを強調するために自分の所二回言ってたけど、そこに突っ込む奴はいない。