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「そんなのは……そんなの世界樹への冒涜だ!」
そんなふうに厳しい目をして会長へというモブリの代表。まあそうなるよな……と俺はおもった。だって流石に今が売り出し時だといっても、その役目……立ち場を誇りにしてるやつにそんなことを言ったらまあこうなるよね。
でも会長は動じないよ。
「それは違います」
「なんでそう言える? 世界樹は繊細なんだぞ!! 我々モブリ以外に近寄ってほしくないはずだ!」
「そうなんですか?」
初耳である。今思いついた設定だろそれ……って思った。それはきっと俺だけじゃないだろう。会長もそうだし、他の代表たちだって、そんなのは初耳だぞ……みたいな感じだ。
「ええっとそれは初耳ですが? 世界樹が意思を示す事が有るとは聞いた事がありません」
「それは君たちだからだ。我らモブリは長年に渡ってずっと世界樹と一番近くで接してきた。だからわかるんだ!」
なんとも曖昧な言葉である。人種の代表が思わず……という感じで言葉を挟んできたけど、それに対する返答もこっちが確かめる術はない。確証ができないことしかいってない。
モブリの代表が言ってることは、自分たちが世界樹に関わる為にいってるだけ……としか思えないんだよな。自分たちが世界樹で有利になるために、そういう設定を言ってるんだとしか……
「なるほど。そんな事もあるんですね。でも大丈夫です。ちゃんとモブリの皆さんは世界樹に関わる人数的には一番多くなるはずです。でも全部じゃなく、もしも半分をモブリで占めるのなら、残りの五割を他の種で割りたいということです」
「そんな異物は世界樹のストレスになる。それに……」
チラチラとなんかエルフとこちらを観てくるモブリの代表。なんだ? エルフはわかる。だってモブリの代表からみたら野蛮そうだもんな。けど俺は別に発言なんてしてないぞ。ただ流れに身を任せてるだけだ。なのに……なんでそんな不安そうな目で観てくるんだ? 不本意だ。
「世界樹を乱雑にしそうな奴らがいる」
「おい」
「だってだって、体ばっかり鍛えてる奴らなんて危ないじゃないか」
偏見もここに極まれりだな。確かにモブリの奴らは体鍛えてなさそうだけど……体鍛えてるから暴力的……というのは偏見がすぎる。むしろモブリは肉体を鍛えてないから心がけっこう穢れてないか?
それは世界樹にはいいのだろうか? そんなことを言ってやりたくなる。