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「世界樹の価値が高まってる……」
そのワードをモブリの代表は気に入ったみたいだ。まあそれは間違いない。世界樹は必要なものだとみんな今回のことで認識した。ただの観光名所のためのでっかい木……ではなかった。皆が世界樹は必要なんだ! と思ってるだろう。ではモブリもか? というと、そうじゃない。大体の奴らはモブリの奴ら何やってんだ!? ――って思ってる。
確かに月の狙いはきっともとから世界樹だっただろう。でもだからってそれで仕方ない……で済まされることじゃないだろう。だって明確な失態だ。確かに誰もそこまで世界樹の価値を正しく認識してなかったのは事実だ。けどだからこそ、モブリはこれまで世界樹の管理を一手に担ってこれたといえる。世界樹を任せられる立場にいたのだ。ならば……その責任だってある。
権利だけを享受しようなんてのは、傲慢といえる。いや、もっというならばわがままだ。子供のわがまま。それにモブリは手を挙げて自ら率先してその役目を担ってたわけで……それが今回ミスりましたテヘ! ――で済ませられるわけはない。だってそれが責任だからだ。まあ俺からそれを指摘することはない。それは俺がもめ事を面倒だと思ってる……というのもあるが、ここにはそれを指摘する奴がいるから……というのが大きい。
「言っておくが――」
そんな風にエルフの代表が言いかけた。けどそれを会長が静かに視線をぶつけることで押しとどめる。いつもならそんなこと気にしない人……だとおもった。だってエルフの代表の自分は偉いんだぞ! って感じの人だ。だからどこの馬の骨ともわからないような会長の視線で言葉をひっこめるなんて思わなかった。まあきっと会長のことは認めてるからだろう。
それに今はかなり冷静だし?
「そうです。世界樹の価値は今、ようやく正しく認識されました。だからこそ、今がそのチャンスなんです」
「チャンス?」
「はい、今こそ世界樹の管理の権利をすべての種に対して売り出すチャンスです。競売です」
「んな!?」
なんかとんでもないことを言い出しちゃったよ。それをこいつに納得させることができるか? できないと思うんだが? けど会長はできないことはしないし、言わない。それはわかってる。というかできなさそうでも、会長なら通して見せる。それが……会長というナンバーワンチームを作り上げた存在だろう。それだのけ知恵と行動力がある。