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「独占してるんじゃない! これは我らモブリが天から与えられた役目なんだ」
「でも、それを誰かと共有してはいけないとは言われてないのでは? 天は、あなたたちだけで管理せよ――といいました?」
「それは……そういう言い伝えはないけど……」
「ならば大丈夫ですよ」
「けどそれは天の言葉を勝手に書き換えることになる! それは天への冒涜だ」
「そうですか? 私はそうは思いませんよ。解釈の余地を残す……それは可能性を残しておいた……ということじゃないでしょうか?」
なんとか説得しようと会長はしてる。モブリの代表はそれを跳ね除けようと頑張ってる。でもそれは意地だとわかってほしい。いくら意地を張ろうと今のこの現状を打ち砕くことはできない。彼……モブリの代表にとっては何もよりもその意地が大事なのかもしれない。プライドといってもいい。でもそれが今のモブリのためになるのか……考えてほしい。視野が狭いみたいだし、世界のこと……を考えることは彼には難しいだろう。でも……モブリの利益となればわかるんじゃないだろうか? だってモブリの代表はそれを最大化しようとしてきた。
いやある意味で最大化することに固執してる。それ以外を選択すると、きっと周囲に追い落とされるか、失望されるか……そんなことがあるんだろう。でもすでに最大化は無理だ。協調しないといけない時点で、それはもう破綻してるいっていい。利益の最大化……それができるのは自分だけで、自分たちだけで解決できるときだけだ。
それなら利益を独り占めしたった何も問題ない。誰も文句言わない。けどほかの組織が絡むとなるともう無理じゃん? むしろこれで「どうぞどうぞ、すべて持ってってください!」――というやつが現れたら、それこそ警戒すべきだと思う。まあ彼の場合は「やったーラッキー」で終わらせそうな危うさがあるが……てかそれが『当然』とおもうんだろうな。なにせモブリの代表は自身が偉いのを自然な事だと思ってる。
そして周囲が自分にかしづくことも当然だと思ってる。ならば……だ。ならば他者から無条件で差し出されることも「当然」なのだ。モブリの中だけならいいだろう。それでも。でも……ここはモブリに忖度してくれる奴だけの場所じゃない。
「選択を残してくれるのは未来を自分たちで選べと言ってくれてるのです。だってあなたたちの未来は、あなたたちだけのもの……なんですから」
「私たちだけの……未来」
なんか胸に来たものがあったのか? モブリはそんな風につぶやいてる。