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「か、会長……と言ったな。君のところだけの戦力だけなら……奪還したとしてそちらは――」
なにか、そうきっとなにか都合のいい妄想を垂れ流そうとしてたモブリの代表。それを会長は最後までいわせることはなかった。
「すみません。私達だけではきっと無理です。皆の力が必要です。これは世界の全てで対処しないといけないこと。一つの種だけではどうしようもないことです。月はそれだけの相手……お分かりですよね?」
「それは……けど冒険者なら、すべての種を抱えてるはずだ!」
けどモブリの代表は折れない。いまのは会長の優しさだった。それに彼は気づいてない。会長はきっと今の言葉をいわせたくなかった。だって今の言葉はエルフの代表……いや、エルフやら我々を切捨てて、すがるのは優しそうな会長にだけ……という心の内が漏れてた。
そんなの風な態度を取られたら、協力しようとしてる側としては面白くない。なにせ――
「もういいもん! お前らのアホ! こっちの都合よく動いてくれそうなやつだけでいいよ!!」
――と言ってるようなものだからだ。それはまさに甘えだ。都合の悪いことを言うやつにちゃんと向き合ってない。けどそれが社会というか? だって、自分たちは種がちがって、そして我々はそれぞれの種を背負ってる立ち場だ。だからこそ、我々が考えないといけないことは種の利益だ。
それはそれぞれの代表が忘れちゃいけないことだ。自分たちがただただ、感情で動く……それがどういう結果になるのか……自分一人が間違うだけならいい。それは個人の問題だからだ。それはただの自己責任といえる。でも俺達はそんな立ち場でない。
俺達が決定することは種全体に影響することだ。それを心しないといけない。だからこそエルフの代表の言葉は最もだ。損をしないように、特をするため動く。それが種のためだから。
ここで感情だけでモブリの為に動くなんてしたら、それで犠牲になるのは他の種だ。そして世界樹はモブリのもの? そんなのふざけるな――なのは当然だ。許せるわけがない。そしてその空気を感じ取ったから、モブリの代表は会長にすがろうとしてる。
それをわかってない会長じゃないだろう。だからすぐに断った。モブリだって損をしないようにと……会長はその言葉を言わせないようにしてた。けど……モブリの代表は言ってしまった。そして言ってしまった事は取り消せない。
「冒険者にだけ頼るのもそれでいいだろう。それで奪還できるのならな。だが会長も肝に命じておけ。貴様たちがモブリに手を貸すのなら、こちらの信頼は得られないとな」
「それはわかってます」
会長は冷静にそう返す。これは会長が想定してた流れとは違うだろう。今、ここに集まった我々は分裂しようとしてる。本当ならどうやって協力して月と対峙していくか……を話し合う場だったはずなのに、それぞれ勝手にやる……ような流れができようとしてる。
その原因は確実にモブリの代表だ。彼が今の現状と自らのプライドに折り合いをつけてれば、正しく今を認識してたら、こんなことにはなってない。
ハッキリ言って俺に今、デキることはない。ただ明言をしないだけ……会長がここからうまく立て直してくれることを期待するしかない。