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きっとアルテミスのエルフの代表はそんなことを言ってるが、反発されたら反発されたで『我らの誇りを!』――とかいうんじゃないだろうか? いやホント。こういう誇りを盾にするやつはどっちにしろ怒るからどうたらいいのかわからない。そんなことを思ってると、会長がしずかに「そうですね」――といった。
それでエルフの視線を向けさせる。イケメンの鋭い視線にさらされても、会長は涼しい顔をしてる。「そうですね」といったが、別に会長はエルフにただ同意したわけじゃないだろう。
「その誇りは立派です。人には誰しも、譲れないものがありますからね。大切な物なんですね。素敵です」
同意した……わけじゃ……おいおい……だよ。そんな事いったら調子づくんじゃ?
「わかってるじゃないか。ならばこのチビたちがそれを捨てようとしてることの愚かしさだってわかるだろう。そして貴様自身の罪もな」
「すみません。私は人には誰しも……と言いました。一人ひとりの気持ち、それは誰にも縛られることはないと思ってます」
「貴様! 我らの誇りを愚弄するか!?」
「いいえ、私は何も愚弄なんてしてないですよ。貴方の誇りも、そしてあの方の選択も、それは個人のですから。誰かの心に干渉しようとすること、それこそ傲慢ではないですか? 例えばそうですね。貴方の言い分はめちゃくちゃです」
ニコニコと、最後の一文はまさにニコニコと会長は言ってのけた。これは……もうエルフは我慢できないでは? と思った。するとやっぱりそうだったのか、エルフが手に装備してた手甲をなげとば――そうとしてたけど、うごけなくなってる?
「落ち着いてください。私はそんな事思ってないですよ。いまのは例えです。けど気分を害してしまったのならすみませんでした」
そういって先んじて会長は謝る。彼女、本当に高校生か? 擦れた大人なら、理不尽なことにだって頭を下げることに抵抗なんてない。けどそれは擦れた大人だからだ。社会をこんなもん……だと諦めて、ただ日々を何事もなく消化することに重きをおいてるからできること。
でも彼女はまだ高校生だと聴いてるぞ。所謂花の女子高生だ。未来に、大人に希望を持ってるだろう。若者は納得できないことには頭なんて下げたくない筈。自分だって昔はそうだった。
なのに彼女は大人のように頭を下げる。けど俺達の様な現実をただ受け入れたやつの謝罪じゃないのだろう。彼女のは全てが一手……のように思える。なにせしれっとアルテミスのエルフの行動を今、束縛してたしな。




