2669 前に進む為のyの解編 18
バシーン!!
そんな思いっきり机をたたいて立ち上がるアルテミナスのエルフの代表。どうやら会長の言葉は彼には受け入れがたかったようだ。効率的……だとはおもったんだけどな。
「ふざけるな! 我らは誇り高い種だ。使われることなどない!」
思いっきりそんな風にいう。別にそれはモブリに……とかじゃないんだろう。きっと全ての種にたいしてそう思ってる。はっきりいってこのLROの5種族の内一番プライドが高いのがモブリとエルフといっていい。それを掛け合わせようとしたら……まあこうなるよなって感じだ。
なにせモブリの方はあんな耳長なんて野蛮だ――と思ってるし、エルフ達はモブリのことをあんな短小族は脆弱だ――と思ってる。そもそもモブリとエルフは相性が悪いと言える。
リセット前……アイがエルフの代表の時はそれが表面化することはなかった。なにせプレイヤーにはそんな感情がそもそもないからだ。長年の蓄積とかそういう設定とか、関係がない。
トップがそんなに気にしないのであれば、それを表立って言うこともできない。だってやっぱりトップには気に入られたいと誰もが思うからだ。そもそもがエルフはどうやら縦社会みたいだしな。
認められたやつがトップに立つ。つまりは前はアイも認められてたわけだ。だからこそ、自分たちが認めた存在を否定するような事は言いづらい。だからリセット前はこの問題が表面化することはなかった。
今もアイがトップにいたら、ここで「そうしましょう」――とあいつならいっただろう。けど、全てはリセットされた。すでにエルフたちの間にアイがトップだった記憶はない。あのときの記憶が存在してるのなら、もしかしたらエルフの中には「あの時はよかった」とかどっかの老人めいた気持ちになるやつもいたかもしれない。
そんな奴らがいるだけでちょっとは軟化する可能性もあった。けど、それも記憶がないんだからなりようがない。むしろこの過激なエルフの長によって更に先鋭化してるといえる。
やっぱり上によって組織全体が変わる……というのはあるだろう。今のエルフはこの長によって共闘なんてできる雰囲気じゃない。てかこいつが許さないだろうし。どうする? と思ってると会長は別に普通の感じで話す。
「使われる? そんな事ないです。エルフの誇りもそしてモブリの誇りも示しましょう!」
ぐっと拳を握って笑顔でそういう会長。こいつの心臓、鋼でできてんのか? って思った。