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「貴様たちは日ごろから確か言ってたはずだ。世界樹の管理を任されてるモブリは選ばれた存在なんだと……ならば、しっかりと管理しておけ。月に取られた時点で管理できてないではないか」
「それは……」
エルフの代表の言葉にモブリはプルプルと震えてる。本当は反論をしたいのかもしれない。でもなるほど……普段からモブリの偉い奴らには選民意識があると思ってたが、世界樹を管理してるのがモブリだから……というのがあったのか。確かに実は世界樹はめっちゃ重要な存在だった。
ただそこにあるだけのめっちゃデカい木……というだけではなかった。実際確かに何かをしてたんだとは誰もが思ってただろう。この世界の力の源を生み出すとかさ……そんな事をやってるかもだけど、別に一人一人にとってはそこまで関係あることもでもない……とだれもが思ってた筈だ。
だってそこに違和感はなかった。確かにあの規模の木なんてリアルにはないから、LROに来てリア・レーゼに行って、世界樹を見るとそのおおきさに誰もが圧倒される。そしてその雄大さに感動さえするだろう。でもそれだけだった。プレイヤーは特にめっちゃデカい木……以上の事を考えてた奴なんているんだろうか?
なにせ世界樹というのはありとあらゆる物語で出てくるような……そんなありふれた……と言えるものだ。だから……まあなんだ? このLROを作った人もとりあえず世界樹は入れとかないとだよな――とかのノリで入れたのだとばかり。実際それは俺だけではなかったはずだ。
ただ――
「これが世界樹か! うおーでけー!」
――の為だけの存在で思考が止まってるのが大半だったろう。だってこんな剣と魔法の世界には世界樹というのはマストバイ……あって当然とまで言えるものだった。
「それに今代の世界樹の御子……裏切ったと聞いたぞ」
ギロリ……と一層鋭い視線をエルフは向ける。美形が怒ると数倍怖く見える……を体現してる奴だ。こっちもその射殺すような目から逃れたくなる。
けどそう言えばそんな話もあった。御子の裏切り……それが世界樹を明け渡すことになった決定的な出来事だったはずだ。裏切り者を出したとあっては、モブリ株は確かに大暴落だろう。でも今回の世界樹の御子って確か……そんな事を思ってると、明るい声で会長が切り込んでいく。
こいつやっぱり凄いなって思う。