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「月への反抗、その作戦を恐れながら提案させていただきます」
どうやら会長はただ単に月への行き方を教えてくれる……とかそんなだけじゃないらしい。まさかのこの事態の参謀に名乗り出る……ということか? 種族の垣根を越えて、月へと対抗するための組織をこれから作ることになった時、その作戦参謀というか? 全ての部隊を動かし、そして軍の指針を決められる……そんな役職を狙ってる? だってまさか、この会長が提案する作戦が通ったりしたら……それを実行する為の一番の適任者は会長自身という事になる。
いや、仮にも俺たちは種の代表だ。その上の立場に俺たちは収まるだろうが、実質的に全てを把握して月への対抗作戦を行うのは、会長……という事になるかもしれない。
(大丈夫なのか?)
それは作戦が……ではない。体調が……である。なにせ会長はまだ目覚めたばかりだ。流石にあんまり無理させるのはどうかと思う。だから俺は反論の準備をしておこう。それか会長はもっと後方的なさ……そんな場所でいられるように提言する。実際俺は月への反抗の作戦立案なんてのは全く持ってできない。
だからそこら辺の対抗案をここで出して、会長の出番をそもそも奪う……なんて事はできない。けど一応俺だって偉いんだ。だからいちゃもんはいくらでもつけられる。とりあえずどうでもいい事をつついて、会長はこの作戦から外させて、種とそこらのプレイヤーが頑張る形にしたらいいんじゃないかな?
(うんうん……あれ?)
どういうことだろうか? 既に会長の月への反抗作戦の説明は終ってた。そして周囲を見る限り、それはとても好感触だ。
「ふっここまでの物をよくも……」
「すみません出過ぎた真似でしたね」
「違う。これなら月を倒せそうだと思ったんだ」
一番気難しそうなエルフの代表……あいつもきっと俺と同じように会長の作戦にいちゃもんつけてやろうとしてただろう。だってエルフはそういうやつだ。特にあいつはエルフ至上主義というか? アルテミナス至上主義が強い。だから一番世界的に見ても新参のテア・レス・テレスなんかに意見されるなんて……と思ってただろう。
だからきっと何かにつけて反論しようとしてた筈。なのに……そんなエルフの代表が太鼓判を押す? でも実際、俺にも文句のつけどころがなかった。どこか小さな穴を突いてやろうとおもってたが……それすらも会長はスラスラと返してくる。完璧だ……この作戦以上の作戦が各種族から出るとは思えない。
文句のつけようも文句をつけてもこっちが納得させられる。これが会長……すべてのチームを追い越して、トップのチームを作り出した辣腕ってやつか。