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「ふむ、ここからはスペシャルバイザーに参加してもらいましょう。それを許してもらえますかな?」
人種の代表はそんな事をいってくる。こっち側から、さっき彼がいった「月の遺跡で月の石を使うことで月への道を切り開く」――事ができるかもしれない。という言葉に対して、色々と質問する事があったのだ。
俺は実際何も言ってないが、だいたい高圧的に質問してるのはアルテミスのエルフだけではある。モブリの代表達はなんか縮こまってる。以前はもっと小さいくせに態度がでかい奴らだ――とか思った記憶がある。
やっぱり偉くなるとどれだけ小さくても態度にはその地位と傲慢さが現れるんだな……とか思った。でもそのモブリ達は今はとても小さい。元々が小さいのに更に背を丸めてるせいで、机の下に隠れてしまいそうだ。
俺は前のやつとは違うのか? と思った。だってそれくらい態度が180度変わってるのだ。でもどうやらそういうわけじゃないみたいだ。人の顔を覚えるのか苦手な俺だ。はっきり言ってモブリとか同じ様な顔に見えて仕方ない。ウンディーネ達はまだわかりやすいが、モブリは……な。小さくてまん丸い。そのせいで小動物のように見えて犬や猫のような括りと同じになるというか……
そのせいで大体同じにみえる。流石に知り合いはわかる。けど、沢山いたら、わからなくなるほどにはモブリを見分けるのは難しい。それに……だ。それに宗教色が強いモブリ達は偉い奴らになると同じ様な恰好をしてるのも見分けるが難しくなる原因だろう。なんか白いローブみたいなのを4・5人で集まって同じ格好をして行動してる事がおおい。
そうなると誰が誰やら……だ。でもなぜに同じやつとわかったのか? それは胸元に特徴的な宝石をはめたネックレスをつけてたからだ。俺は鍛冶が専門だが、凝った細工は目に留まる。しかもやっぱり偉いやつがつけてるものはかなり凝ってるのだ。だからよく覚えてた。
同じものがある? いや、このLROの世界は大量生産の態勢はまだ整ってない。言うなれば産業革命はまだ起きてない。だから基本はどんな物も職人が一つ一つ造ってる。だから代々受け継がれてる……というのにリアル以上の価値がある。
それにあれほどの物をポンポン作れるわけもないと俺が職人だからわかる。あれは一点物だ。そうなれば、きっと同じ人物だろう。
(だが、あの態度だったやつがこれか……)
一体何があったんだ? と思った。俺はそんな事が気になったが、他の代表達はそのスペシャルバイザーとやらに興味があるようだ。そしてそいつが許可を得て入ってくる。
「失礼します」
聞こえたその声に覚えがあった。俺達が入ってきた扉とは別の扉から入ってきたのは、テア・レス・テレスの長である「会長」だった。