9
「月への侵攻手段はあるのか?」
それはアルテミスのエルフがいった。壮年のエルフは凛々しい顔をしてて、更にはなんか美しいという、とても美丈夫のエルフだ。なんか白い。白く……そして白い。これが女性なら、とんでもない絶世の美女だっただろう。まあ男でも美しいが……でもちょっと傲慢そうな……そんな所が見てとれる。
そんなアルテミスの今の王であるそいつの言葉に、人種の代表が何やら紙をペラペラをめくってる。ちなみに人種の代表者はあまり特徴がない。普通のおじさん……と思える感じだ。ちょっと小太りで、お腹が出てて、さらには頭皮が薄い……このLROでは珍しいタイプの見た目をしてる。
リアルではとても親近感が湧く見た目だ。まさにどこにでもいる普通の中年……でもこのLROでは逆に珍しい。なにせLROにはイケメンやら美女が多い。そしてイケメンやら美女が多いと言うことは、それから歳をとったとしても、イケオジになって、美魔女になる……ということだ。
もちろんそんな人達ばかりじゃないが、けどやっぱりリアルよりも格好いい大人とか多い気がする。
やっぱりそれはこんな世界……なのも要因の多くを占めてるだろう。こんなモンスターが跋扈してる世界。そしてリアルほどに豊かでもない世界だ。だからこそ、精悍な人たちが多くなるのは当然だ。
リアルよりもずっと死が近い世界。そして自分の身は自分で守らないと行けない世界だ。だからこそ、ただダラダラと過ごす人がリアルよりもずっと少ないんだろう。娯楽だってリアルほどに有るわけじゃない。
テレビとかないしね。ゲームだってそうだ。テレビの前から動かないなんてことはなく、遊ぶとなれば子どもたちはその体を動かすしかないだろう。いや一応テーブルゲームは結構豊富にある。なにせそれはミニゲーム的に実装されてるからだ。
きっとプレイヤーの中にはそれをガチでやってる人だっているんだろう。でもそれは今は関係ない。ある意味で彼の様な人物を見ると安心できる。その苦労してそうな見た目。てか普通に目元の隈とか、腹は出てるのは血色悪い顔とか……なんかこうリアリティがな。すごい。心当たりがありすぎる。
「資料では月の遺跡が鍵だそうです。そこで月の石を使うことで、月への扉が開かれる……かもしれない」
最後はとてもボソッといってた。はっきり言って聞こえないくらいの声だった。いやむしろ、聞いてほしくないという感じの声だった。でも残念かな? ここにいる彼らは皆、その種の代表だ。
能力は高い。俺だってそこそこ高い。だからきっとスキルが揃ってるんだろう。NPCはウインドウを開けるわけじゃないから、プレイヤーと全てが同じ……とはいかない。だがしかし、彼らもスキルをちゃんと習得してる。それができるのだ。
そしてこの世界は強さは正義だ。最強……でなくてもいが、強いほうが発言力が強いのは言うまでもない。だからここに種の代表達は有る一定の戦闘力はあるだろう。人種の代表……はそうは見えないが、きっとバランス崩し的な何かを有してるんだろうと思った。