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「なんということだ……」
そんな風に耳が尖った美しいと言える様な美丈夫が頭を抱えてる。おおきな部屋でテーブルは円卓。余計な椅子が排除されて必要なものだけが用意されてると、この円卓は俺達だけではとても持て余す様な……そんな大きさがあった。
豪華な椅子には間違いようがないように、それぞれの種のシンボルを入れた布がかけられてたし、テーブルの方にも、色やら小物でどの種の代表が座るべきなのか……それがわかるようになってた。
まあだが、俺は最後にやってきたから空いてるせきに座っただけではある。でもそこに用意されてたクロスにコップと、それらは全て、自分たちのシンボルが入れられてて、かなり凝ってる作りになってる。わざわざこのために用意した? いや、元からずっとこういう風になってるのかもしれない。
そもそもがこんなVIPな待遇? というのを受けたことがない身からしたら、こういうものなのかどうかだってわからない。
「ほえー」
とか実はおもってたが、俺は仏頂面を貼り付けてた。まあこれがデフォルトの顔なんだが。それから、人種の代表が音頭を取って会議は始まった。議題はもちろん『月』のことだ。実際最近は以前にもましてこういう会議……増えた。煩わしくて俺はなるべく参加しなくていいならしなかったんだが……今回は流石には逃げる……なんて事はできなかった。
確かに月の事は深刻だ。それはわかる。鍛冶にだって影響がある。なにせ天上が定められた。自分の鍛冶に必要ないくつかのスキルが封印された。なんか違和感があったから確認したら、無効になってたのだ。いくらタップしても今はもうそのスキルをアクティブにできない。
きっと月の性なのだろう……とは思ってた。でも俺はそこまで深刻に捕らえてなかった。どうやら他の者達はそうではなかったみたいだが、俺は――
「おもしれえ」
――とおもってた。制限があったほうが「じゃあどうしよう?」という思考が働く。それによって新たな鍛冶の可能性に気づく。それもまた鍛冶の醍醐味だろう……と思ってた。だから別に……ではあった。
けどどうやらそう思うのは少数派らしい。下の奴らにもせっつかれてたし、この会議をバックレることはできなかった。そうやって参加してみたわけだが……なにか建設的な意見がでてるかというと……なにせ相手は月だ。
敵が遠すぎると攻めるのだって難しい。だからまずはそこからどうしたらいいのか? という問題になってる。