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「こんな所にいたんですね師匠!!」
「その師匠とかいうのやめろ。俺は認めてなんてない」
「何言ってるんですか師匠! 私は師匠一番の弟子じゃないですか!!」
「えーと、そうだったかな?」
「ししょうおおおおおお!! 酷いです!!」
そんな事を言ってるのは12歳位に見える少女。赤毛のボサボサの髪に大きなブーツにブカブカのズボン。腰には沢山の工具がささってる。上着はとても薄いタンクトップ一つ。そんな危うげな恰好の少女は鍛冶屋の事を師匠と呼んでた。
見た目には全然頓着してないような……そんな少女だけど、顔は普通に可愛い。目はクリクリとしてて何にでも興味を持ってそうなそんなキラキラがみてとれる。それに忙しなくピョコピョコと動くところも愛らしいとおもえる。いつの間にか鍛冶屋のやつ、こんな子を囲んだんだ?
「おいおい、隅に置けないじゃん」
いつも鍛冶ばっかりやってこの美人が多いLROでも女っ気なんて全くなかった鍛冶屋。それがいつの間にかこんなかわいい弟子を持ってるとか……やることやってんじゃんって感じだ。
僕は素直に嬉しいよ。素直に祝福できる。
「あっ、お師匠様の知り合いですか? 私はお師匠様の一番弟子の『ピノン』です!」
ピノンと自己紹介をした少女。どうやら彼女はNPCみたいだ。このLROのNPCはかなり自由というか? 心がある。だからこそ、ただのプログラムで動いてない。自身の心に従って、そして考えに従って動いてる。
だからNPCと意識する必要なんてのはない。ただ普通に一人の人間として接するのが一番正しいだろう。だから僕はそうしてる。
「僕はスオウ。そうだね。彼の友達だよ」
「まさか、お師匠様に友達なんて!!」
なかなかに面白い子のようだ。でもいつも鍛冶して、他の事をおろそかにする鍛冶屋にはこのくらいグイグイと行く人のほうが良いのかもしれない。ピノンちゃんはどうやら大人しくしておく……というのが苦手なようだ。アーシアもそうだし、幼い子はそうなのかもしれない。
いや、アーシアは見た目的には僕達と同じくらいはあるからね。ちょっとした痛々しさ……いやそれはあえていわないが、ピノンちゃんはうん、なんか普通に見てられるな。
「うるさい。何しにきた?」
「痛い!」
普通に拳骨を下ろす鍛冶屋。容赦がないやつだ。一応見た目的にはピノンちゃんは可愛い女の子だぞ。てかしっかりと髪とか梳かして着るものも女の子らしくしたら、かなり化けそうな……そんな気がする。普通に美少女になりそう。
「もう師匠のバカ! 私はただもうすぐ会談が始まるよって言いに来たの! ってそうだった!! お師匠そんな恰好じゃだめだよ!!」
自分の発言を受けて、慌てふためくピノンちゃん。なんとも微笑ましい子である。それにしても会談? 確かに今、この移動する国である彼らの種の移動要塞は人種の国の首都へとやってきてた。
何故に? とか思ってたけど、まさかそういう事? 今世界は大変なことになってる。ということは、それぞれの種のトップが顔を合わせて会談をする……というのは何もおかしなことじゃない。
「おい、こんな事してる場合じゃないぞ!」
僕も慌てだしたよ。なのに鍛冶屋ときたら……
「いきたくねえ……」
――といってわがままを言ってる。これはピノンちゃんも苦労するわけだ。