2649 前に進むためのXの問い編 1033
「ラオウさんどうして?」
この人だっでついさっき目覚めたはずである。それに協会はアキバにあった筈で……いくらなんでも僕が一回最寄り駅に向かったからといって、その間に僕の家まで来れるような距離ではない筈だ。この人とうとう人間やめたか? と僕は思ってしまった。師匠であるラオウさんにそんな事を思うのは大変に失礼かもしれないが、だって……ね。
元からこの人はギリギリ人間だったみたいなものだ。人類? それともラオウさんだけを別の人種として定義した方がいいような……そんな存在だったのだ。大きな括りで見たら、今の人類は皆人類だが。僕達は日本人という種だ。そして白人やら黒人やらだっている。
けどさ……ラオウさんはそのくくりに入ってるのか? という疑問は前からあった。だってこの人だけファンタジーに片足を突っ込んでる。間違いなく……ね。
「そこそこあの家は遠かったと思いましたね。足が必要かと。違いましたか?」
この人は超能力者か何かなのか? てかあれだけの武力を個人で持ってて、さらには気配りもできるとか……完璧じゃないか。いや、ラオウさんが怖いのは見た目だけで、その内心はとても心優しい人だというのはわかってる。この人が敵とかじゃなくて、本当に良かった……と思うもん。
もしも……だよ? もしも、世界大戦が再び始まって僕のような学生も徴兵とかされて戦場に立った時、向こう側にラオウさんが見えた瞬間に降参する自信がある。願わくばこの人と敵対する事がないように僕は祈るしかない。所で……その気遣いはとてもうれしいが、この速さは疑問でしかない。疑問でしかないが……
(まぁいっか、ラオウさんだし)
僕はその理由には蓋をすることにした。そもそも僕がラオウさんが何故に僕の家にこれほどまでに早く来れたのかなんて、気になるけどそれで僕に不利益があるか? と問われたらない。むしろ都合がいい事しかない。なので僕は聞くのはやめることにした。
「いいえ、最高です!」
僕はサムズアップしてそういった。そしてラオウさんの車に乗り込む。実はセツリも行きたいんじゃ? とか思った。なにせ車ならセツリだって一緒に行ける。だからメッセージでもしようかとも思ったけど……セツリはセツリでいま大変そうだしやめておいた。