2635 前に進むためのXの問い編 1019
「本当にやる気か? 私は今なら見逃してやっていいんだぞ」
「そんな事!!」
気分良く言ってくる妖精王。今も成長を続けてる月の植物たち。それはすごい勢いで森を形成してる。でも無秩序に成長していくとしたら、もしかしたらこのままこの月にいたら植物が襲いかかってくる……という状況になるかもしれない。それに全部が木々に包まれる……というのもなんか違う感じがする。
どこかできっと止まるんだろうと思うが……それをするのはこの妖精王なのか? それとも? 月の女王? でもセツリの姿は見えない。もちろんだけど、会長の姿も……だ。
だからこそ、こう言うしかないだろう。
「決まってるだろ!!」
俺は槍を構える。そして炎がその槍全体に滾った。別に俺に対してはその熱を伝えることはない。それに続くオウラさん達。それは後から来た面々だ。元からここにいた面々はなんかあんまり乗り気じゃない。どうしてだろうか? 眼の前の妖精王を倒せば、少なくとも落ち着いて会長やスオウの帰りを待てるはずだ。
倒すか倒さないの判断なら、できるなら倒す――方が良いと思う。そして今はかなりの実力者がこの場には揃ってる。勝てる要因はある。
「今の私が今までの私ではないとわかってないようだな」
「何? どういうことだ?」
確かになんか妖精王の背中の羽……が大きく、多くなってる気がしないでもない。半透明の美しい羽が左右に4つずつで八対あったと思うけど……今は左右に十二……つまりは二十四対になってるのは気の所為じゃないかもしれない。
てかその羽の数が妖精の強さの証なのか? よくわからない。けど……その圧迫感はすごい。綺麗だけど、綺麗すぎて怖くなるというか? そんな感情がなんか湧き上がる。ガクガクと震える膝はでも恐怖ではない。
むしろ尊敬とか、信仰? 上の者を……存在を見る感じ。自然とそう思ってしまう。でもそんなのは駄目だろう。戦う前から敵が上だなんて思ってて勝てるのか? 勝てるわけない。だからそんなおかしな気持ちは押し殺す。そもそもがおかしい。きっとこれは妖精王のなにかの効果だ。
だから気持ちを強く持って立ち向かう心を奮い立たせる。
「今の私に少しでも立ち向かおうするその心意気は認めよう。だが――」
妖精王がその腕を右から左に流れるように動かす。すると虹色の光がその手から流れ出る。そして次の瞬間――
カッ!!
――と強い光が放たれる。そして妖精王の背後に美しい女性がいた。白い薄く透ける服。背中には大きな白い羽。そしてその頭にはヴェールがかかってて更には頭の後ろからでてる白い羽がその目を覆い隠してる。腕には金と黒の剣をもってる。神々しい……そんな姿の天使? それともあれも妖精なのだろうか? わからないが、そんなのが妖精王の背後に現れてた。