2624 前に進むためのXの問い編 1008
「思ったんだけど。日鞠の目的って何だったんだ? 当夜さんと会う……事が目的じゃなかったんじゃないか?」
僕はシッシ――とまるで犬を追い払うかのようにやってる当夜さんを無視して日鞠にそう問うた。だってだよ? だってそもそもの日鞠の目的を僕はまだ聞いてない……と思ったんだ。
大体だよ? 大体、日鞠はなにか目的があって行動をするやつだ。だからここに来たのだってなにかあるはず。わざわざ月にいって妖精王と戦って、そして何やら契約を交わしての月のシステムの深淵へと潜った。
それには明確な「目的」があるはずだ。そしてそれが当夜さんとの邂逅……とは思えない。だってそれは「結果」であって、本当の日鞠の「目的」ではないと思う。そこはイコールじゃない。
いうなれば、月のシステムの深淵に潜ったら、そこにはなんか当夜さんというこのLROの開発者がいた……であろう。
「そうだね。それが目的じゃなかったよ。でも……おかげで私は色々と深くなったよ?」
深く? どういうことだ? それは目的は達した……ってことなのか? よくわからないが……今の日鞠に聞いておく意思がある。
「もう、いいのか?」
「うん、当夜さんの事は心配だけど、ここへのルートは作れるからね。大丈夫だよ」
そういって日鞠の奴は紙を見せた。メモ帳の一枚。そこには何もないようにみえるが、複雑な多階層のコードが綴られてる。明らかに今までのコードと密度が違う。てかこれ……
「あの変なコードってお前が書いたのか?」
僕を誘導してたような、惑わせようとしてたようなあのコード……この場所に組み込まれてたけど……
「勝手にいじるなと言っただろう」
「大丈夫ですよ。あれはスオウ専用なので。来るのはスオウだってわかってましたから」
どうやら僕のために用意してたらしい。日鞠は当夜さんからあの多重的に書いてるコードを教わったかの? でもここに来る前の紙にもあったよな? きっかけは自身で掴んだのかもしれない。そもそもあのメモにコードを詰め込むってそもそもが限界だったし? だから解決策を日鞠は考えた。それが多重かで、それは奇しくも当夜さんと同じ解決策だったのかもしれない。
「帰れるのならなんでもいい。お前がずっと寝込んでるからリアルは大変なんだよ」
「ごめんなさい。ちょっと夢中になりすぎたね」
そういって素直に謝ってくれる日鞠。そしてなんか当夜さんに色々といってる。
「わかってますか当夜さん? 私がいなくなってもちゃんとお風呂入ってくださいね。ここはちゃんと一日を感じれるようにしてるので、規則正しい生活してください。寝て起きるんです。そして運動ですよ」
まるでお母さんみたいだな……と思った。