2621 前に進む為のxの問い編 1005
「怖いのはわかります。いや、わかるなんて簡単に言っていい事じゃないのかしれない。でも……僕は二人がもう一度会ってほしい。会って、家族をしてほしい」
それは僕の家の様な家族じゃない。あんな冷え切った関係じゃなく、僕がいう家族というのは日鞠の家のような……そんな普通の家族だ。優しいけど怒ると怖いお母さんに、ちょっと生意気だけど、姉を慕ってる妹。お手伝いも妹の面倒も積極的に見る姉に、家族を見守り、縁の下から支える父親。
そんな理想の家族。勿論、当夜さんと摂理には二人しかない。だから同じような家族にはならないだろう。そんなのはわかってる。でも、二人なら二人の家族としての形があるだろう。僕にはわからないが……きっと当夜さんにも摂理にもわかってない。
だって二人が一緒にいたのはもうずっと前の事。何年も……何年も前の事だから。でもきっと戻れると思う。それが家族だろう。いや、僕が家族なんて語れないのはわかってるけどさ。そういうのじゃないだろうか? そう聞く。
だって二人が想いあってるのは確実だ。そしてそれは以前はちゃんと家族をやれてた……と言う事だろう。最初から破綻してた僕の方とは違う。だからきっと戻れると思うんだ。不安はわかる。
でも……
「いつかの別れを恐れるよりも、今積み重ねられる時間の方が大切じゃないですか?」
「それであの子が悲しんだらどうする?」
苦しそうな視線を僕に向けてくる。でも次は日鞠がこういった。
「当夜さん。摂理ちゃんは当夜さんが思うほどに弱くないですよ。それに……」
そういって僕を見る、それに目を閉じて色々と思いだすようにしていう。
「今、摂理ちゃんは一人じゃないんですよ? 悲しむ事があっても、私達が……友達が支えます。ね、スオウ」
「おう」
それが友、というならそれをやるべきだ。そう、もう摂理は一人じゃない。なにせ学校では大人気だ。あの容姿だからな。女神やら天使やら妖精やら……そんな風に言われてる。ちょっと都会にいったらナンパが止まらないし、芸能関係者というのからのスカウトだって一度や二度じゃない。
まあそこら辺は当夜さんにとっては心配でしかないだろうけど……摂理には愛される要素がいっぱいある。
「悲しまないのは……なんか悔しいぞ」
「なんですかそれ」
なんか面倒なことを言い出したぞ。悲しんでほしくないんじゃなかったんかい!?