2617 前に進むためのXの問い編 1001
「家族と友は違う……か。当然だな」
「そうでしょ? 摂理にとっては家族はあなただけなんですよ? リアルではもうどうにもならないかも知れないですけど、ここならいつまでだって一緒にいられるんでじゃないですか?」
リアルではすれ違ってた二人。ちいさな時にセツリはLRO……というかその前身の仮想空間に捕らわれてしまった。そもそもが開発者が当夜さんなんだから、囚われる……というのがまちがってるのかもしれない。
あえて……あえて当夜さんはセツリをこの仮想空間に残したんじゃ……どういう意図かは知らないが、きっと必要だったのかもしれない。そしてセツリがここで眠ってる間に、当夜さんはLROというゲームを、いや世界を造り上げた。あれはセツリの為の世界だ。
僕はそう思ってる。それが最後の当夜さんの摂理への贈り物。それできっと出来る事は全部やった……やりきった……と当夜さんは思ってる。そこには満足げな気持ちだってあっただろう。
「こんな世界を造り上げて贈る当夜さんは凄いと思います。ここでなら、セツリは自由に動けるし、もうたくさん友達だっている。そのためにここを作ったんですよね?」
「自由な世界。そして美しい世界をあの子に見せたかった。あの子はずっと病院にいたからな。あの子が自由に出来る世界を作りたかった」
「それで作り上げてるんだから凄いですよ」
普通の人では絶対にできない。それをこの人はやり遂げた。褒められることだ。賞賛されることだ。けど……
「でも、今ここにあなたがいないのは罪ですよ。当夜さんがいて、LROがあったら完璧だった。そうでしょ?」
「厳しい事をいう」
そういう当夜さんは皮肉めいた感じだ。そんなことを言ってくれるな……って感じか? これだけの世界だ。作り上げるのにはいっぱい無茶をしたんだろう。それはわかる。いや、内容はわかんないけど、大変だったのはわかる。
無茶に無茶を重ねて、この人は……どうにかできなかったのだろうか? 誰か止める人はいなかったのだろうか? そして……考えなかったのだろうか? 摂理が……悲しむという事を。分からないはずないだろう。
この人だって、そのくらいはきっとわかってた。LROを造り上げて満足して……そして摂理を残して逝く……それは……それは……
「当夜さんのそれは自己満足じゃないですか。凄い物をつくった。これで摂理が大丈夫と確信したんでしょう? でも、そこには摂理の思いは置き去りじゃないですか。それじゃあ、貴方の自己満足だ」
僕は日鞠の手を強く握りながらそういった。きっと僕はここまでの事を日鞠がいなかったら言えなかっただろう。だって……こっちも辛い。