2616 前に進む為のxの問い編 1000
「スオウそれは……」
日鞠がちょっと僕を非難するような視線を向けて、首を横に振るう。それはきっと触れてはいけない話題……という事だったんだろう。実際触れづらいというのはわかる。だって家族の問題だ。それを他人がどうこう言うのはおせっかいというものだろう。
でも……それじゃあ二人はもう絶対に邂逅しなさそうだ。きっと当夜さんはそんな覚悟が在る。けど……ここにいるじゃん。当夜さんはもうリアルにはいないかもしれない。リアルではもう一緒にいることは出来ないかもしれない。
でも、彼の精神はここにある。それなら……それならここで位家族……をやってもいいじゃないか? 僕の様にセツリと当夜さんは嫌いあってるわけじゃない。寧ろきっと、もっと居たかった……と思ってるはずだ。そのはずだろう。
二人は互いを思ってる。そうじゃないと、妹の為にこんな世界を作り上げるなんてことは出来ないし、セツリだって兄の為に涙を流す……なんてことない。僕にはわかる。だって僕はきっと両親の為に涙を流す? なんて事は絶対にない。恩があるとしたら、生んでくれたことくらい? だ。
「それは……」
当夜さんが口を開く。けど、すぐに顔を逸らした。それに言葉も続かない。きっと彼はセツリにあう気はない。きっと裏からそっと見守るつもりだ。
「裏からあいつを守れれば満足ですか?」
僕は言ってやる。日鞠だってわかってるだろう。強い視線で目を合わせると、「はぁ」と息を吐いた。でも止めはしない。もう僕の方に付くことにしたからだろう。
「けどあいつは……セツリはきっと当夜さんに会いたいと思ってます」
「もう、あの子は安定してる。今更……」
「今更ってなんですか? わかってますか当夜さん?」
「なにを……だ」
わかってない? いや、わかってる筈だ。それとも、目をそらしてるのか。それならはっきりといってあげよう。いくら天才でも、人間関係とかは苦手ということもあるだろう。いや天才だから……か?
「あいつは一人なんですよ」
「君が……君たちがいる。友達だろう?」
そういう当夜さん。そうだね。僕も……そして日鞠ももちろんそれは認めよう。でも……違う。そうじゃないんだよ。僕たちは友達……でも貴方は――
「友達と家族は違います」
――至極当たり前のことを僕はいった。