2607 前に進むためのXの問い編 991
「見えない? ふふ、そもそも私達はここでどうやって見てるんですか? 眼球からの光を通して? 違いますよね?」
「そこまでもう来たか……俺がそこまで来たのはこうやって一体化してからだぞ」
「私、なんでも受け入れる事ができるんです。私、拒否感ってないんですよね」
なんとはなしに日鞠はいってる。当夜さんも呆れてるが……でもその通りだと思った。そうだ。日鞠の強さ……いやその寛容さの根幹にはきっとそれがある。日鞠が誰にも受け入れられて、日鞠の周りにどんどん人が集まる理由……それこそがその拒否感のなさだ。
今、日鞠自身が言ったことで、長年の疑問が氷解した気がした。普通……それこそ誰しも苦手な奴っていると思う。それに汚いものとかみたら「うわー」とか思うじゃん。誰かから悪いことを言われたら、なんだこいつって思うし、同調したいことを言って笑い合ってても、 同心は互いに馬鹿にしてる……なんてものあるあるではないだろうか?
どこかできっと「いや」と思う拒否感がでる。道路で死んでる虫とか見ても出る。友達が体調悪くなってもしもゲロとか吐いたとしたら? その吐瀉物に対して……それを吐いた友達に対して拒否感とかでるものだろう。
勿論その後に持ち直して、処理を手伝ったとしても「うわー」とかは残る。けど……日鞠はそんなのまったくない。そもそもが日鞠は友達じゃなくても……いや、待てよ。僕はとんでもないことに気づいたかもしれない。
日鞠ってもしかして……
「そもそもが今のはただシステムで『見る』ことを取り上げただけ。だから私は見ることをやめたんです。ここでは『見る』必要はないですから」
「どうりで俺の防壁が反応しないわけだ」
「そうだと思いましたから。私ではまだ貴方の防壁を突破できません」
「ほんとにそう思ってるか?」
「クスクス、本当ですよ」
楽しそうに会話してる二人。友達のようで……恋人……のようにも見えるかもしれないが、僕は首をふる。そもそもが僕達はまだ高校生。それに対して当夜さんはもう成人してる。
大人っぽいってのが何なのかはよくわかってないが、年の差はわかる。今の当夜さんは清潔感もあって服装も……まあこの部屋の中ではちょっと浮いてる冒険者の服だけど……そこさえ目を瞑ればいい大人の男だ。
やっぱりあのセツリの兄だけあって、当夜さんもイケメンなのだ。ある意味で年の差を考えたら日鞠とも当夜さんは兄妹に見える。そう思ったほうが僕の精神衛生上はいい。
でも……さっきの言葉……そしてこれまでの日鞠のことを思い返すと……
(日鞠ってもしかして誰も友達とかおもってない?)
そんな気がした。