2604 前に進むためのXの問い編 988
「そんな事は興味ないな。なにせ自分の役割はもう終わっている」
「それは……」
一体どういう身なんだろうか? 僕はちょっと気まずくなる。だって彼はもうなくなってるはずで……だからこその自分の人生は終わってるから決定権なんてない……とおもってるのかもしれない。
じゃあここにいる彼はなんなんだってことになるけど……きっと思考だけはこのLROというか思考間ネットワークの中においていたんだろう。表層ではなくもっと奥深くの深里の部分に。僕達は今思考間ネットワークの深い場所にいるから、こうやって精神しかない当夜さんと話せてる。
当夜さんはもう死んでる自分がリアルに干渉するのは良くないとおもってるのかも? もしかしたらただ面倒な事はしたくないだけかもしれないけど……
「本当にそうですか?」
ふと、日鞠がそういう。そんな日鞠はなんかやたらニコニコとしてる。それは自然な彼女の笑顔ではない。どうみても作り笑い。不自然な程に笑顔を作ってる。普段はそんな作り笑いなんてする奴じゃないと僕はちゃんとわかってる。
なにせ彼氏で幼馴染、付き合いは長いからな。でもこんな顔を知らないか? と言われれば知ってる。これはなにか悪巧みをしてるときの日鞠である。むしろわかっててやる時、こいつはこんな作り笑顔をする。きっと反応を予想してるんだろう。
ということは、なにか日鞠は当夜さんの本心をしってる? ということになる。そう思ってると、まるで手品のように何処かからか日鞠は紙を一枚取り出した。
本当にどこにしまってた? というかんじだった。だって今の日鞠の格好はラフな格好で、むしろ脇まで見えてるような……そんな服だ。袖とかがあるのなら、そこに仕込むとかできるだろうけど、脇までもろ出しでそんな事はできない。
まあここは仮想空間だ。きっとコードを使ったんだろうというのはわかる。日鞠が取り出した紙……それは真っ白だ。何も書かれてない。でも……日鞠がその指でひとなですると、あら不思議……その紙が変化しだす。
それはなんか真っ黒な本? になっていってるようだ。なかなかの厚手の本で、ハードカバーと呼ばれる本みたい。真っ黒な表紙に金の文字で細工してあるデザインが見える。でもすると……
「お前……どこでそれを……」
――となんか当夜さんが声を震わせだす。え? 何? なんかまずいものなのか? そう思ってるとすぐに本は完成した。そしてその本のタイトルは金字でこう書いてあった。
『天鎖駆ける俺の夢! ――絶対実現!!』
うん……痛い中二病ノートだなって一目でわかった。