2595 前に進む為のxの問い編 979
コーヒーにこだわりがあるのか、しっかりと自分でコーヒーを入れた当夜さん。豆を挽いて、お湯を注いでコーヒーを完成させる。けどその間も……
「お湯は回しながら、均等になる様に注いでくださいね」
とか
「時間が何よりも大切ですよ。。貴方の好みの時間なら――」
とか、全ては日鞠の介護ありの事だった。最後に出がらしとなった豆の残骸を退かして、湯気が立つコーヒーをカップ事持ち上げて鼻先でその香りを楽しむ当夜さん。僕もコーヒーは飲むが、そんなこだわりはない。だから香りの違いなんてのはわからない。
コーヒーの香りだなっで感じだ。けど当夜さんは一口口をつけて、何やらうんうんと頷いてる。納得できるコーヒーになってるようだ。そんなことを思ってると、コトッと僕の傍に日鞠がトロピカルな色の飲み物を持ってきた。
マンゴージュースみたいに見えるけど……これが本当にマンゴーを絞ったものなのかはわからない。まあけど、日鞠が僕に対してまずいものを出すわけはない。それに危険な物もね。だって誰よりも僕の事を気にしてくれてるのは日鞠だ。いうなれば親よりも……だし? だから僕はとりあえずそれに口をつけた。
ストローを咥えて吸い込むとズズズズズズと流れ込んでくるトロピカルな味わい。太めのストローからは果肉も十分流れるようで、濃厚な味が口に広がる。けど果肉があるからって粘り気が強いってわけもなく、ちゃんと喉を潤してくれる。
うん、店で飲んだら、千円超えそうな豪華さだなって思った。マンゴーがベースの様に思えたが、その味には近い。でもちょっと違うような? 気もする。でも何種類か混ぜ合わせてこの絶妙な味を作り出してるかも。
「どうかな?」
「美味いよ」
「うんうん、幻の果実らしいからね。元気も出て来たんじゃないかな?」
「それは……」
どうなんだ? てか幻の果実なんて大層な物を使ってたんだ。もしかしてその一種類だけでこの複雑そうな味を作ってるのか? ならば確かに幻の果実というだけあるのかもしれない。何種類もの果実を組み合わせたような……そんなきがしてたけど、幻の果実だけのジュースなんだろうか?
「ふ、知らないのは幸せだな」
キッチンから戻ってきた当夜さんはそういって自分の席に腰を下ろす。日鞠も自分の分のジュースとともに腰を下ろして再び団らんの空気が漂い出す。けどこのままずっと団らんしてる訳にはいかないろう。だから僕は切り出した。
「それで、これってどういう状況なんだ? なんで当夜さんの世話をしてるんだよ?」
別にこれは嫉妬じゃない。純粋な疑問だ。ほんとだよ?