2593 前に進むためのXの問い編 977
二人が……二人の距離感が気になる今日このごろの僕である。食事は和気あいあいとした感じで終わった。別に食事を楽しくするのはいいことだろう。日鞠のやつは派手で見栄えのするような料理はあんまり得意じゃなく、もっと普通の……それこそ和食? とかそっち系が得意というか……家庭料理って奴ばっかりだった。煮物、和物、魚料理っていうね。
別に他の……それこそ洋食ができないわけじゃないと思う。でもきっと僕に作ってくれてたご飯とかはバランスや栄養を考えての献立で、あったんだろう。でも今回のはなかなかに派手な料理だったと思う。
ホイル焼きとかさ。いや、それ自体は魚料理だし、別に今までの傾向とそんなに変わりはない……のか? てか……
「ふう、ごちそうさまでした」
僕は久々の日鞠の料理を堪能した。それで満足してた。お腹を擦って満腹満腹……みたいな? そんな風にくつろいでたら、「お粗末様です」――と日鞠がいって、僕の食器も流しの方へと下げてくれる。それは別に特別なことじゃない。普通の……いつもの事だ。
僕自身が持っていくことだってもちろんあるんだけど、今は日鞠の料理という余韻に浸りたかったからだらけた。何十年も食べてきた味……といっても最近はちょっとレアになってたのも事実。それならその余韻を味わったっていいだろう。
ふと……僕はカチャカチャと音がする方を見る。そこには一緒になって洗い物をする二人が……つまりは日鞠と当夜さんが見えた。
「上手になってきましたね」
「こんなの誰でもできるだろう」
「その誰でも……に当初入ってない人がいましたけど? 生活力皆無でしたけど?」
「それは必要がなかっただけだ。これだってプログラムを組めば一瞬だ」
「でも食事は片付けまで含めるものです。こうやって自分の手でやることで、達成感って生まれると思いません?」
「煩わしい」
「ふふ」
あれ? 何あれ? なんか……いい雰囲気だぞ? おかしいな……なんか恋人……夫婦に見える。おかしいな……あのポジションにいたのは僕のはずなんだけど……日鞠が手際よく洗い物をして、泡を流す、それを当夜さんが受け取って、布巾でその水気を拭き取って食器が重なってる所にもどしてる。
二人の息はとても合ってるように思える。ただの洗い物を一緒にしてるだけのことだ。
(大丈夫大丈夫。僕は彼氏なんだから。落ち着け。あれはただ仲が良いだけだ)
僕はそれを一生懸命言い聞かせた。