2591 前に進む為のxの問い編 975
「日鞠!?」
「あら、スオウ。来てくれたんだ」
「お前が言ったとおりだったな」
「はい。スオウはいつだって私の期待に応えてくれるんですよ?」
「はいはい、惚気なんて見せられてもな。ご馳走様」
「まだご飯食べてないですよ。いらないんですか?」
「これはお前らのラブラブっぷりに対して言ってるんだ!」
「スオウスオウ、私達ラブラブだって!」
えっと……これは? どういうことなんだろうか? 僕はかなり真剣に心配してここまできた。それは確かだ。なのに……だよ? なのにふたを開けてみたら、なんかとても楽しそうにしてる。それに当夜さんのお世話……してない? ここで大事なのは当夜さんは当然だけど、男である。
いや、何かある……なんて思ってない。日鞠はどっかで立ちんぼをやってるような同年代の女子とは違って、ちゃんと倫理観があるやつだ。簡単に心も体も許すなんていうどっかがゆるゆるな女じゃない。
だから二人が男女の関係になってる……なんて思わないけどさ……なんか二人めっちゃ軽い会話を繰り広げてない? もっというと、なんか二人は仲がいい。そして距離が近い。確かに日鞠は人の心を解くのが得意な奴だ。
誰だって日鞠の事好きになるからな。けど二人が出会ったのはまだ数日な筈。なのに、もうなんか……ね。
「それで今日はなんだ?」
「はい、今日はホイル焼きですよ。ここは食材はなんでも手に入るから便利です」
「変な食材使ってないだろうな?」
「食べたら一緒ですよ。ここならお腹を壊す心配もないじゃないですか」
「お前な、俺は潔癖なんだよ」
「知ってますよ。でも私の料理美味しいって言いました。食べたくないんですか?」
「……く、食べる」
「はい! ほら、スオウも来て」
そういって男二人を扉に引っ張る日鞠。いや、本当に仲いいね二人。僕は彼氏なのに……
(ふん、僕なんてもう十年来日鞠の手作り食べて来たし!)
そんな変な対抗意識を燃やしてる。扉の向こうは屋内だった。明るく、そしてかわいく清潔さが溢れてるダイニングって感じ。センスもいい。とても日鞠っぽいと感じた。
「あっ、椅子が足りないね。ちょっと待って」
元々は二人の予定だったんだろうテーブルには二人分の椅子とか食器しか用意してなかった。用意された二つの食器にはちゃんとクロスが敷かれてて、それは赤と青。きっと日鞠が使う方が赤いクロスの方で、当夜さんが使う方が青いクロスの方なんだろうって思った。なんか夫婦とか……恋人とか……そんな感じに思えて僕の心がざわざわする。
てか自然に彼はもう座ってるし。
「当夜さん、ちゃんと手を洗ってください外から帰ってきたんですからね。それからその恰好のままじゃだめですよ」
「腹減ったから早く……」
「しっかりしてください」
「……わかった」
なんか力関係が見えた。まあ大体の奴に日鞠は強いが。日鞠が弱いのなんてそれこそ赤ちゃんとか僕くらいだろう。渋々という感じで、当夜さんは手を洗いに炊事場にいく。その間に、日鞠がコードをちょちょっといじって椅子と、そして僕の分の食器とクロスを用意してた。