2568 前に進む為のxの問い編 953
「そう……だな。アーシア達がいるよな」
僕はそういってアーシアの頭をなでる。アーシアの髪はとても手触りが良いから、なでなでしてると落ち着く。それに人肌のぬくもり? というのが、ちょっと僕を持ち上げてくれる。
だって結局……僕は会長が残した紙のコードを解読することは出来なかった。だって今まで僕が見たことない形式だったというか? やっぱりちょっと先に行きすぎてたんでは? 日鞠だって間違う事あるよな。それはちょっと寂しい。だって日鞠が僕の事を見誤った……ということだから。そんな事絶対にない……と思ってた。
僕は基本ひねくれてるから、人間同士が完全に理解するなんてありえないと思ってる。テレビとかで恋人同士が出てて「私達なんでも通じ合うんです!」とかインタビューに答えると――「はっ」――と鼻で笑うようなさ。そんなわけないだろうとか思ってしまうやつだっだ。
なのに、日鞠とは通じあってるとか思ってるとか……お笑いである。でも本当に自分たちは特別だと思ってた。でもどっちかが先に行ったというのなら、それはきっと日鞠だろう。
僕と日鞠……どっちが先にいってどっちがその場に留まってるのか……といえば日鞠は前に進んで僕はきっと足踏みしてる。それは納得できてしまう。だってあいつはいつだって前を観てるやつだからだ。それに比べて僕はどうかというと……普通に学生してるだけだからね。
僕は日鞠の成長についていけてない。うすうすは気づいてたけど……こうやって日鞠が残してたメッセージを僕が解読できなかったことでそれを自覚してしまった。これまでは何とか……それこそ日鞠が寄り添ってることで同じ場所を何とか歩けてる……とか思ってたけど、日鞠が配慮してくれなくなったらこれだよ。
これで彼氏と言えるのか? 僕は自分自身に問いかける。
(そんなの格好悪いだろう)
彼女に寄りかかるだけの彼氏なんて……そんなの紐じゃん。それは嫌だ。やっぱり互いに支えられるような……そんなのが理想だろう。理想は理想でしかないのかもしれないけど、だからって僕は日鞠に寄っかかるだけなんてしたくない。
「スオウ……みんなで来たんだよ」
そういってくるアーシア。そうだな。僕は意固地になってたのかもしれない。僕が……僕が……って、でもここにいる皆は日鞠を助けるために集まってくれたんだ。
「僕だけじゃ、この紙のコードがわからない。意見をくれるか?」
「したないわね」
僕の吐露した弱音、それにローレの奴はやれやれ、という風に肩をすくめてみせたよ。