2561 前に進む為のxの問い編 946
「少しは頭を冷やしたらどう? 焦るのはわかるけど、自分を見失うな」
そんな事を言われた。僕は自分を見失ってなんて……そんな事をやってる間に、光も納まってきて、野太かった光の柱も消えていく。さっきまであった月の街。同じような建物が建て並んで、所々でちょっと違う建物があるかのような……それこそ街づくり系のゲームでよくある建物の使いまわしが見えてた月の街。でもそれらは綺麗さっぱりに消えてしまった。
残ったのは月の城だけだ。流石に月の城は崩壊する……なんてことはなかった。その綺麗な姿を普通に保ってる。システムの保護も多分レベルが違うのが月の城には適用されてるんだろう。
そしてその中で妖精王はクルクルとしてた。それこそダンサーがやるような、片足を膝小僧の所にあてて、両腕は横にして肘でおって胸の前にもっていって独楽にしたかのようにクールクル――とね。
あの中でもほぼ無傷なんだが……
「やってくれる」
そんな風に言ってくる妖精王。けどその回転……止めてもらっていいですか? ちょっと間抜けに見えるぞ。せっかくのチャンスだったのに、こうなったら不意打ちはもうできない。向こうもあの魔法中に動く……というのはなかったようだけど……これじゃあただ振り出しに戻っただけだ。進まないといけないんだ。
一分……一秒だって無駄にしてる場合じゃないのに……
「はぁ、心配ありません」
僕の心情……それをわかってるのかセラはそんな風にいってくる。心配ない? そんなわけないだろう。悠長にやってる場合じゃないってくらいにはもうなってるんだよ。だから妖精王には無慈悲に行くのが一番……卑怯? ズルい? そんなの甘んじて受ける覚悟はある。
そんな事を思ってると、再びデカい魔方陣が輝く。は? ――だ。それはどうやら僕だけじゃなかったようだ。妖精王も同じで、ようやくその回転を止めて上を見上げる。再びこの場所……いや、それよりも更にデカい魔方陣が展開してる。まるで空がないこの月に、魔方陣という空ができたかのような……その規模の魔方陣。
まさかだが、さっきの魔法よりも強力な魔法がこんな続けざまに撃てるっていうのか?
「さあ、妖精王。この場所に……この月に逃げ場なんてないですよ。お話、しましょう?」
にっこりと、ローレの奴はそういった。それはとてもいい笑顔だけど、リアルでいうとこれって銃口を額に押し付けながら交渉を持ち掛けてるような物だからな。ようは脅しである。