2539 前に進む為のxの問い編 923
『おい! どういうことだよ!? 月への道の必要コストが跳ね上がってるぞ! こんなのぼったくりだ!!』
というクレームを僕はセツリへと送った。それも一回じゃない。何回も送ってやる。まさにクレーマーである。だってこれで日鞠を助け出せると思ったんだ。それなのに……さらに足踏みさせられるなんて……こんなのクレーマーになっても仕方ないよね?
するとセツリからはたった一回「確認する」というそっけない返事が来ただけだった。なので僕はそれにかぶせるように。
『なんでだよ?』
『早くしろ』
『まだか?』
とかいう短文を送り続けてしまう。完全に嫌な奴だ。そんな風にウインドウとにらめっこしてると、誰かが僕の前に立つ。そしてスパーン――と良い音で僕の頬を叩かれた。
「は?」
衝撃で一瞬で呆けたが、目の前の人物に視線を向ける。するとそこにはメイド服を着たセラの奴がいた。そしてこれ見よがしになんか僕を叩いた方の手袋を外して捨ててるし。まるで汚いものを触ったから交換しよう……みたいなやり方である。
「お前、何のつもりだよ?」
イラっとして思わず声が低くなる。けど、セラの奴は全く持って動じた様子はない。そして正面から堂々とこう言ってのけた。
「見苦しいのよ。落ち着きなさい。誰かに当たってあの子が戻ってくるの?」
まっすぐに見つめられると、感情的に言い返すこともできなかった。だってセラのいう通りだったからだ。僕はセツリに当たってた。それは事実だ。
「はいはい、いやー流石だねセラさんは。スオウ君もイラつくよりもなにか建設的な事を考えよう。これだけいるんだ。皆君の味方だし、それにここにいる皆は会長さんの事を心配してる。それをわかってほしい」
テッケンさんのそんな言葉に僕は皆に謝った。僕だけが焦燥に駆られてる訳じゃない。それだとこんなに集まったりしなかっだろう。皆が心配してる。僕だけじゃない。
皆きっと僕の焦りに気づいてた筈だ。けど、雰囲気がそうさせたのか、皆の優しさが僕を止める事が出来なかったのかもしれない。けどそこにセラである。やさしさの欠片もないこいつだから、僕をひっぱたけた。
(いや、あれも優しさか……)
わかってる。その位。こいつだって僕を心配してくれたんだろう。頬が熱い。叩かれた方が……
「何が原因か調べる。コードは僕にしか見れないし」
僕は頭を切り替えて僕にしかできない事をやろうと思った。こんなのはおかしい、ならばどこかに不自然なコードがあるかもしれない。内側からアプローチできるのは僕しかない。だからコードをよくみる事にする。
「わかればよろしい」
セラのその発言に「何様なのこいつ?」と思った。