2536 前に進む為のxの問い編 920
「よし、やっぱり残ってる」
僕は月の石を稼働させて、そこに残ってるコストを確認する。やっぱりここの月の石は全く稼働してないようで、十分なコストが残ってた。これを使えば、きっと月への道を開くことができるだろう。なら早速……と行きたいところだけど……
(ここじゃだめだな)
とりあえずコストがある月の石は手に入ったんだし、ここから脱出した方がいいだろう。てかこのままだと僕たちは人の家の庭を吹っ飛ばしてそこにたまたまあった遺跡に侵入した不届きものである。
面倒になる前にさっさと帰った方が……
「……とりあえず」
僕は僕が回収して空いてしまったところにローレから預かってた月の石を嵌めておくことにした。実際月の石は全く同じ形をしてるわけじゃない。
石なだけあって、全部がばらばらな形してる。川辺にある大量の小石を思い浮かべてもらえばいい。あそこにだって一つだって同じ石はないだろう。そういう事だ。
けどなぜかカチッと月の石は開いてる部分にはまるのだ。おかしいな? 形違うはずなんだけどな。まあけどここはゲームだし、この石は『月の石』というくくりである。だからだろう。
LROはとても現実的なリアル感が人気なわけだけど……面倒な部分は上手くゲーム的に落とし込んでるのもいいのだ。インベントリなんてその最たる例だ。
だって誰もが持ってる異空間収納なんてリアルにあったらどれだけ便利か。絶対欲しいよ。でもない。皆しってる。そんな便利なものはないって。
けどここでは便利だから取り入れられてる。リアルさを売りにしてるし、この世界で新たな自分に成れることが人気でもあるわけだけど、便利なものは皆享受したいんだよね。
そういう割り切った所がLROにはある。そこはなかなかに思い切ってる。
ここも月の遺跡……それにこれだけ完璧な状態だし、ここで月への扉を開くのがもしかしたら一番いい可能性はある。だって万全な場所だからだ。他にはきっとない。
(いや、探せばあるかもしれないけど……)
でもそんな時間は僕たちにはない。僕たちは世界を探求してるわけじゃなく、囚われた彼女を救いたいんだから。
「おお! なんとこれは!!」
「どうですか? 彼がきれいに月人は追い払ってくれてるでしょう?」
「確かに、傷も……入り口だけで中の状態は完璧といっていい。どうやら君の話は本当だったみたいだね」
「恐れ入ります」
何やら小太りの中年男性がローレ達と一緒にやってきてた。だれ? 僕はそう思った。




