2535 前に進むためのXの問い編 919
壁画に圧倒されたが、今はそんなものはどうでもいい。一応簡単にシャッターを切ってたけど、僕の目的は壁画ではない。歴史的価値みたいなものに興味はない。そもそもがここはデータだし、ゲームの中だから歴史的価値なんてないが、この世界的にはきっと価値が高いものだ。それに僕自身が扉をあばいて、そして壊した。この状態がいつまで保てるかもわからないからね。もしかしたらこの壁画はちゃんとした、システムに用意された月への道を示してるのかもしれない。
それはつまり今僕たちが求めてる邪道の道じゃない。本当の、それこそ本筋の道。きっとそれが示してあると思う。これ見よがしに壁画があったのも、そういう事だろう。朽ちてる壁画が多かったが、きっと沢山の人たちの力を合わせたら、壁画が組みあがっていき、推測を交えて、沢山のプレイヤーが挑戦して、そして月の道が開く……そんなストーリーが用意されてるんだと思う。素晴らしいじゃないか。きっとそんな過程を経て踏みしめた月の大地はきっと感動できる。月から見る、この星をみて誰もが「青い」とか言うかもしれない。
でも……
(既に僕にはそんな資格ないし……)
そう思う。てかただの事実だ。だって僕は既に一回月の大地を踏んでる。だからもう二回目になるからね。そんな僕が本筋の道を行けるわけない。僕に出来るのは手助けぐらい。まあこの行動で月がどうなるか……それはわかんないんだけど……もしかしたら正攻法の道の意味がなくなったりするかもしれない。そうなったら、また沢山の人に恨まれるかもしれない。
「けどそんなの……」
関係ない。日鞠が戻ってくるのなら、そんな状況になったって受け入れることが出来る。それだけ僕の中では日鞠の割合は大きい。だって既に五日だよ? そんなに日鞠と離れた事なんてない。自分の心が渇望してる。日鞠の声を……日鞠の存在を。僕は壁画にハマってる月の石へと近づく。状態の良い遺跡には壁画にハマった月の石がある。そしてそれはここにもあった。円形の部屋、グルっと壁一面にある壁画の丁度中心、そこには四人くらいの人? が崇めてる姿が描かれてる。中央にはきっと月の王。いや女王か。そしてその頭上にある光。光を発してるような絵には月の石かハマってる。
僕はその月の石を起動させる。