2532 前に進む為のxの問い編 916
「なんの御用でしょうか?」
いぶかし気な目をして、こっちを見てくるメイドさん。一応あまり大所帯で押しかけるのはよくない……ということで、まずは僕はローレとそしてアーシアがここにきた。本当なら僕とローレで行こうとしたんだけど、アーシアが「自分もいくのー」と譲らなかったのだ。
実際、ここが月の遺跡という事、この屋敷の人が知ってるのかどうか……それもわからなかったからね。別にこの屋敷の人がそれを喧伝してる……なんて情報はなかった。
安心を求めるのなら、夜までまって忍び込む……とかが良かったのかもしれないが、今やLROの一日は地球とリンクしてしまってる。リセット前は、LROの内の時間はリアルの時間よりも早く進んでた。けど今やそんな事はない。完全にリアルとLROの時間は一致してる。
だからもしも夜まで待つなんてなったら、本当にその通りの夜まで待たないといけない。そんな悠長なことが今の僕にできるか? できる訳ない。待ってられるわけがない。
なので、さっそくやってきたということだ。これが貴族だったら、こんな風にいきなり訪ねて会えるわけもなかった。てか誰かが出てくることもなかったし、もしかしたらそれだけで罪に問われるかもしれない。
けどこの屋敷は大きいが、所有者は貴族ではない。だからこんなことができた。豪商とかなんだろう。そんな風に財を成せば、一般人でもこうやってメイドさんを雇えるんだから、なかなかに夢がある。リアルではそれこそメイドを雇うなんてなったら、超がつく上級国民か、ヘンタイか……となるだろう。
でもLROならば、そこまでおかしなことでもないんだよね。なにせメイドさんが普通にいる世界観だからだ。
「えっと……あのですね……」
僕は遺跡に行くことを優先してたから、なんていおうとか考えてなかった。だだ猪突猛進だった。すると、横からピョコっとローレが出てきてこういうよ。
「すみません! 私達遊んでたら、ちょっとこの家の庭に大切なものを飛ばされたんです! 少しで良いんです!はいらせてもらえませんか?」
「大切なものですか?」
「はい、この子の……」
「うえーーーーん! えーーーーーーん!!」
もちろん泣いてるのはアーシアである。まさに本職のごとくエンエンと泣いてる。凄いなこいつ。まさに幼女のように泣いてるぞ。一応みためだけなら、もう女子高生くらいはあるんだけどね。寧ろローレよりも見た目だけなら、アーシアの方が高い。
逆の方がよかったんじゃないか? とかおもうが、ローレは流石にこんなエンエンと泣けないだろう。
「そう……ですか。屋敷には近づかないでくださいね」
あまりの見事な泣きっぷりに妙齢のメイドさんは不憫に思ってくれたらしい。いや、引いてたのかも? けどおかげで僕たちは屋敷の庭に侵入することに成功した。