2523 前に進むためのXの問い編 907
「やけにテア・レス・テレスにこだわるな? あまり大事にしたくないってわかるだろ?」
これはこれからのフルダイブ型のゲームにも影響するかもしれない問題だ。それに一番は日鞠を思ってのこと。あいつの醜聞なんて広めたくないじゃん。誰よりもすごいやつだって、僕自身がわかってるから、その名に傷なんてつけたくない。
色々と嫉妬だってしたりするけど、やっぱり日鞠はすごいやつだって思われててほしいんだよな。日鞠をちゃんと知ってるやつはそこに疑いを持つ……なんて事は無いけど、そこまで関わった事がないと日鞠・会長はそんなに特別に見えることはない。だからどうしても「なんでこんなやつが?」とか「こんな人が」と思うやつは出てくる。
まあ全ての人、全ての初対面の人に恐れおののかれるなんて、そんな事はないなんてわかってる。でもきっと自分の何処かですごいあいつを見せたいのかもしれない。
「わかってないのはスオウの方よ。いうでしょ? 木を隠すには森の中。私達が少数で動くよりも、大きな出来事にしてその中で私達が独自に動く。それこそ大衆の目をごまかせるというものよ」
「それは……」
ない……とは言えない。ローレの言い分もありえる。少数が動いたほうが目立つ……というのはまあなくもない。皆が同じ方向に歩いてるのに少数の人達が逆方向に歩くと目立つ。そういうことだろう。けど……
「でも下手に大事にしたら、それこそ大きな視線が向く。そうなると僕達の動きだって気づかれる可能性自体が高くなるだろ? なんでそんなに大事にしたいんだよ?」
「大事にしたいっていうか……アーシアちゃん。私達だけで大丈夫?」
そう言ってローレはアーシアにそうきいた。アーシアの直感は確かに大事だけど、それだけ頼るのは違うと思う。それに、そういうなんとなくとか、直感とかそんなのにすがるヤツだったかこいつ?
「う、うーん。よくなったと思う。でも『みんな』が必要かはわかんない」
アーシアの言葉を信じるなら、今の人數でも大丈夫かはわかんないが、人が多ければ良いというわけでもなさそう。
「私は必要なんだよね?」
「うん! ローレちゃんは一緒じゃないといや!」
ローレはどうやら絶対に必要……らしい。納得できないが……仕方ない。でもそんな時ボソッとローレはこういう。
「負け戦はしたくないんだけど……」
――とね。こいつやっぱり勝率を上げるためだけによりたくさんを巻き込もうとしてるだけだ。なんかそれっぽい事を言ってたが、ただの口八丁で僕を誘導しようとしてただけ。
やっぱり油断も隙もみせちゃいけないやつだよこいつ。