2518 前に進むためのXの問い編 902
「なんで……」
お前が……と続くはずの言葉を僕は飲み込んだ。だってこいつはそういうやつだからだ。僕たちは袂を分かったはずだ。いや、そんな大層な事じゃなかったけどさ、僕は既にローレの奴のチームを抜けてる。なのにこんな堂々とここに来るなんて。いや、一体どうやって……ここに?
「酷いわね。私達の仲じゃない。ねーアーシア」
「ローレちゃん!」
僕から跳ねるように離れてローレの所にいくアーシア。二人は手を合わせてクルクルその場で回ってた。さっきまでの涙は一体? 一瞬で引っ込んでるんですけど。ウソ泣きか? いや、きっと違うんだろう。アーシアのテンションの乱高下は激しいから、哀に振れてた気持ちが一気にローレに対して喜びに触れただけだ。てか、どうやらさっきローレが言った「私たちの仲」というのは僕とローレではなく、ローレとアーシアらしい。おい! だよ。まあ実際、こいつはなんか危険な感じがあるし、僕を厄介ごとに向かわせるから離れたいと思ってた。そしてようやくしがらみが解かれてローレから離れることが出来た。
実際、このくらいの仲でいい。でも……アーシアがめっちゃ仲良かったら、結局僕もかかわることになるだろう。それがわかってしまうから、そしてローレの奴もわかってるから、アーシアとキャッキャッとしてるなか、僕を見るときだけ鋭い目つきになってる。当然アーシアは気づいてない。でもあいつは僕がそれに気づくことだってわかってやってるのだ。
「ローレちゃん聞いてよ! スオウが一人で月に行こうとしてるんだよ!!」
「へぇ……それはそれは……」
ジッと僕を見てくるローレ。一番知られたくない相手に知られてしまった。僕はなんとか止めたかったが、手段がなかった。なにせアーシアに思いっきり突っ込み入れて止めるとかできるわけないし……
「でも月へはどうやって行く気なの?」
「えっとね。セツリちゃんが協力してくれるって」
「まあ、そうなるわよね」
納得……という感じのローレ。ローレは僕とセツリが同じ家に住んでるとか知ってる。だからその気になれば、月の女王は味方になる、と思ってたんだろう。
「そもそも、もう一人で行くなんていってないだろ? 早く準備しろアーシア」
僕はなるべくローレにはかかわってほしくなかった。だって絶対に面白そう……とかこいつ思ってるよ。なのでさっさとこいつから離れる為に出発を急ぐんだ。でも……
「ローレちゃんも行こう!」
「ええ、そうね」
とんでもない事をアーシアがいって。その提案ににべもなくローレは乗ってきた。ちょっとは迷えよ。その即決即断は凄すぎるだろう。なんなのこいつ? いつもは自分で動くことなんて早々ないくせに……