2516 前に進むためのXの問い編 900
「いーくー! 私もいーくのー! 月に行きたいよ!」
そんな風に暴れてるのは僕のエリアに住んでるアーシアだ。花から生まれたこの謎の存在は僕が保護したことで、僕が世話をしないといけないようになってしまった。いや実際、面倒を見るとかの事態は別にいいんだ。そんなに悪くないと思ってる。まあ面倒だし、アーシアはちゃんとやってるかな? とか思って心配したりもするが、案外……なんとかやれてる。まあ実際、アーシアがここに住む……となる前はそれこそ最初の掘っ建て小屋に、ちょっとの丘そして唐突に表れる小川……くらいしかなかった訳だ。
それが初期のエリアの姿。掘っ立て小屋も人が住む……というよりは荷物置き場のような……そんな感じだった。だって六畳くらいしかなかったと思うし、窓は一つで、薄暗かった。中には光源もなかったのだ。でも流石にそんな所にアーシアを置いて自分は自宅でぬくぬくとしてる……とはいかないだろう。だからアーシアが住むことになって今まで手付かずだったエリアを整えた。少しだけ広くして、森でアーシアが生まれたこともあるから、周囲は森にした。森にぽっかり空いた日差しがよく当たる小川の傍のウッドデッキ。それが新たに作りあげたエリアだ。
内部もかなりこだわった。いや、僕が……じゃなく、セツリとか会長とかが……だけど。セツリは安くセンスいい小物を。内装を会長率いるテア・レス・テレスがやってくれた。なので、かなりおしゃれだ。でもそれも駄々っ子がジタバタしてると、台無しである。それに一人じゃない。一人と一匹がこのお洒落でセンスがいい建物の中でジタバタと地団駄を踏んでるのだ
アーシアなんて背中を床につけて「やーだー」と一桁台の子どものような事をしてる。見た目は僕のような高校生よりも少し幼いかな? くらいである。それが……こんな風にジタバタしてるとかなりシュールと言うか? いやまだ許される? そしてそんなアーシアに付き合ってるのがヤドリカだ。
ヤドリカは宿があるから、ひっくり返ったりはできない。けどその大きなハサミを叩き合わせて同じように抗議をしてきてる。ヤドリカのハサミの音はかなり煩い。まるでシンバルを叩いてるかのような……あれよりも更にうるさい音してる。
「あのな、さっきからさんざんいってるけど、遊びに行くわけでも観光に行くわけでも無いんだよ。月は危険がいっぱいなんだ。そんな所に連れて行くなんてできるわけないだろ?」
もしも月に旅行ができるのなら、迷わずにアーシア達だって誘う。いや、ヤドリカは遠慮してもらうかもしれないが、アーシアはちゃんと連れて行くよ。けど今回はそんな呑気なことになり得ることはない。
敵の中枢に行こうと言うんだ。そこにアーシアを連れていける訳無いじゃん。わかってほしい。アーシアだって僕の言葉を理解してないわけはない。なのに……こんな……
「私はスオウが心配なの! 絶対に私が一緒にいった方が良いの!」
さっきからアーシアはこの調子である。