2508 前に進む為のxの問い編 892
僕はこの家の女性、名前は『屋久帳』さんとしばらく話してた。広いリビングとかを提案されたけど、僕は日鞠が眠ってる所で話すことをお願いした。
もしかしたら目覚めるかも……とか思ってたのかもしれない。日鞠が自分で言ったことを曲げるなんて事はないのにな。こいつが2・3日と言ってたら、それはきっとそう。早くても2日で戻ってきて。遅かったら3日はかかるという事。
でも大体なんでもできる日鞠である。2日と観ていいだろう。それにこれだけちゃんと準備してた。それはつまりはきっと日鞠の中ではこれは想定内の事だ。
自分がLROの中に数日の間入ったままになる……それを想定してないと、ここまで準備はしないだろう。
僕は出されたティーカップを手に取る。何やらとてもおしゃれなコップだ。きっと雰囲気のいい喫茶店とかでだされそうだ。そしてその中の鮮やかな紅茶を口に含む。顔を近づけただけでいい香りは漂ってきてたけど、口に含むと内側から鼻孔をくすぐる様に通りに抜けていく香りが心地よかった。それに紅茶自体は熱いけど、この部屋は冷房が効いてるから、それを不快に感じることもない。
「どうですか? まだ修行中なんですが」
「とても美味しいです」
そんな風に僕が言うと、屋久さんははかなげな笑顔を見せる。本当になんか幸薄そう感が漂ってるが、顔は整ってるし、上品な未亡人感がにじみ出てる感じがとても「あり」だな……と僕は思ってた。
「私は日鞠さんに助けてもらったんです」
そんな風に始まった自分語り。どうやら屋久さんが未亡人というのはあながち間違いではなかったみたいだ。彼女には旦那さんがいたという。
けどその人は不幸にもこの世を去ってしまった。事故……だったらしい。色々とお金の面は一人になっても大丈夫らしいが、けどそういう事じゃないよな。
僕だって日鞠がいなくなったら……と思うと……僕の視線を追って屋久さんはこういうよ。
「大切にしてあげてください。後悔しないように」
――とね。その言葉にはとてつもない重みを感じた。