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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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歩数三万上昇中

 歩いて歩いて走って走って、そして戻ったり進んだり、同じ道を行ったり来たり、僕達はアキバという街を右往左往してる感じだ。だけどここからはただ単にイベントに振り回されるターンは終了。

 情報は十分に集まった。考えは一つの可能性を導き出した。リアルで人に出来る――誰にでも出来ることが、イベントを進めるんだ。

 僕たちはようやく動き出した。色々と余計な事をやってきたけど、それも全情報が揃うまでの待機時間だと思えば安いもんだろ。

 まあ本当なら、揃う前にイベント終了になってもおかしくは無かったけど、今や僕たちには沢山の個がより集まって集団でもコミュニティでも無い、ただそこに報告と自分たちの成果を上げる関係が成り立ってる。

 それはハゲ達の様な上下関係とかでも、他の団体参加者ともきっと違う。利害関係とかじゃないネットで繋がれた、ともすればとても薄い関係だ。

 けどその薄さが、何本も何本も枝分かれしていき、圧倒的な線を面にし繋がってる。それは文句つけようない位に十分。今は取り敢えず感謝しとくよ『豚の饅頭さん』。そのハンドルネームの人がこのスレを立ち上げてたんだ。ふざけた名前だけど、ふざけてない名前の方が少ないからまだ普通だよな。

 スレにはどんどん書き込みが上がってた。内容を読む方が大変な位だよ。まあてか、ワンランク上のアイテムの入手法のキッカケをみんな知ったからって、一気に流行りアイテムを手放す辺りは、みんな現金だよな。

「これで良いか」ってな感じの人達までも、きっと今はその上のアイテムを目指してる。ここに情報を上げてる人達はきっとその筈。

 それにどうやら、一度でも流行りアイテムを求めるNPCにやらないと、その上のステップの言葉は引き出せない……そういう感じみたいだからね。


「そう言えば無限の蔵」

「何だよメカブこと時の監視者様」


 いやいいんだけど……もう諦めてるんだけど、無限の蔵って言いにくく無いのかな? なんか端から見てたら、僕がそう呼んでほしいみたいじゃないかこれ? 違うんだ。この電波女がその痛い二つ名を捨てさせてくれないんだ。

 てか原因はシクラの野郎だけどな。今、シクラはシクラで、上がりまくってる情報の整理やらせてる。そういう地味な作業がとっても嫌いらしいシクラには、ちょっと指をちらつかせて脅してやったぜ。

 今はスマホの中でヒーハヒーハーやってるよ。そしてメカブが、最後のシェイクをジュッコジュコ啜る口をストローから離して、言葉を返す。


「この情報って、なんか全くこっちとは関係無いの入ってない?」

「まあ、心当たり無いのは確かにあるな。けどレアなアイテムは三種あるんだろ? それなら別の奴の入手方なんじゃない?」


 確かその筈……レアアイテムは三種だったから、僕達がやってるの以外にも別の入手方法があってもおかしくない。てか上がる情報を見てると、多分それぞれのアイテム一つ一つに入手方があるみたいだ。

 これじゃあ三種全部をコンプリートする強者は流石にいないかな? まあもしかしたら、こんなネットに惑わされずに独自にやってたかも知れない、団体参加者の中には居るのかな? それは確かめる術が無いことだけど……


「三種それぞれの入手方法ね。確かに考えられるかも。けどそれじゃあどこで分岐してるのかしら?」

「どこで……ね。あれだろ、NPCじゃないか? 流行りアイテムを渡すNPCによって分岐が変わるとかだろ。僕達はたまたまこの厄介な方が当たったんだよ」


 普通に何も考えずに近くのNPCに渡したもんな。三つのアイテムそれぞれに対応してるNPCが違う……それはこうなって初めてわかった……というか考察出来たこと。でも多分間違っちゃいないと思う。


「そう言えば無限の蔵はとことん厄介事を引き寄せる体質だったわね。それはもう一種のスキルなんじゃないかしら?

 生きてて辛く成らない?」

「どういう事だよそれ……」


 同情か? 同情なのかそれは? 失礼な奴だな全く。


「いいから今はイベントだ。お前が無駄に胃の要領がデカいせいで時間食ってるんだぞ」

「私のエネルギー変換効率を否定しないでくれる。それにちゃんとテイクアウトにしたじゃない」


 テイクアウトまでが長かったんだよ。それにさっきからジュコジュコ言うシェイクの音がうるさい。蝉の鳴き声同様、ずっと聞いてるとうんざり成ってくるぞ。


「とにかく、競争率高く成ったし、急がないといけないだろ。何人この事に気付いてるかわからないんだし」

「競争率っていっても、別に一個限定とかじゃないなら、大丈夫だと思うけど。てかこれが正解かもわからないじゃない」

「だから確かめに行くんだよ」


 ようやく導き出せた、迷路の出口かも知れない場所へ。ここで改めて入った情報を整理しておくと、どうやら食われた人達の出てきた場所は大体同じだったとか。

 それになんと、その食われたNPCがこのブリームスには配置されてるとかなんとか。そいつに運良く流行りアイテムを渡した人は、違う情報が聞けるらしい。

 なんでもその時の様子と、向こうでの事。そびえ立つ巨大な建物群のその場所は無人だったとか、あるところで見つけた宝箱をあけるとブリームスに戻れたとかそんな感じだ。

 そして僕達はその戻って着た場所……宝箱があったとか言われてた場所……じゃない所へ向かってます。だってそれってあからさまじゃん。それにどう考えても、その場所は人が良く行き交う場所なんだよね。

 何にせよ、だからそう言う場所はあながちフェイクなんじゃないかと、LROを斜めから見たわけだ。てかあからさまにその場所だとわかるのだと怪しいもん。

 これまでの情報から何かが紐解けるのだとしたら……そう考えた訳。


「でもこれも、結構無理矢理な感じはするけどね」

「仕方ないだろ。けど、あり得なくもない」


 僕はいぶかしむメカブにそう返す。手には入った情報から考えられる事だよこれは。人を食う通路に、浮いた宝箱に、出入り口の違いに、向こうとこちらの相違。後はNPC達の言葉。

 それらはきっと全てがヒントになり得る事なんだろう。確認された宝箱の場所は七カ所。そのどれもが触れてもダメだった。その時点でどれか一つが当たりって訳ではないって事が証明された。

 まあもしかしたら、特定の条件を満たせば七つ全部が当たり……ってのもあるけど、それは結果論だな。僕達のこの行動が結果的にはそうなるかも知れない可能性はあるよ。


「ようは、言葉の解釈の問題で、このネットを介してるからこそ分かったことよね。みんな丁寧に場所とNPCの名前と会話内容まで上げてくれるんだから様々よね」

「そこまでさせたのはお前だろ」


 ブリッ子使って「情報の正確さを求むんだぞ☆ キュンキュン」とかやってたもん。


「まあ確かにこれだけ、NPCの言葉が集まらないと分からない事ではあったかもな」


 人を食うとか最初に僕達は聞いた訳だけど、違うNPCはオーソドックスに神隠しとかの言葉を使ってた。それにアイテムの情報も少しは触れられてたもん。

 三つのアイテムの場所はいまや分からなく成ってるけど

、それぞれ噂で寒い所、暗い所、高い所にあるとかどうとか。

 まあこれは噂だからね。それに自分達のやってるこのルートがどのアイテムへ繋がってるか分からないから、それは結構意味ない事だ。

 まあ何となく暗い所に対応してそうな気はするけどね。ブリームスじゃあの宝箱が浮いてる通路は存在してない訳だし……暗いが明かりの意味じゃないのなら対応してるよな。でも浮いてるんだし高い所って線もあるにはある。けどあそこは存在してないから、その可能性はね。しかも建物の上にあるならまだしも、あの程度で高いなんて言われるのもな。ああ、存在してないってのも味噌だね。


「まあとりあえず、ここでアイテムをランダムに渡す謎が分かったな。あれは直前にどのNPCと会話をしてたか、それにきっと寄ってる。

 関連性が高い人物同士で会話を聞くと、その繋がりがアイテムへと成るってな感じだよな。それで一つ分かる事は、ブリームスでは会話の順番が大事って事だ」


 僕は研究所の前の爺に話しかけて、そして屋上にいたそこの偉い人からアイテムを貰ったんだもんな。そこには明確な上下関係の繋がりがある。まあ掲示板を見る限り、それは最初だからこそ分かりやすいって感じだけどな。

 大体、こうやってズラーと文字にして見ないと気にも止めれない事だ。けどよくよく考えたら、これに気付かせる為にイベント側も、NPC達の言葉が普通のゲーム画面ぽく表示させる様にしたんだなって思う。

 まあこっちは裏の理由なんだろうけど……そこまで含んでたのかって事が驚きだよ。そしてどうやら、僕の読みではこの大事な会話をしてくれる奴らも検討ついてるぞ。キーワードは研究所・存在しない通路だ。

 その二つはきっと関連性が高い。いや、もしかしたらだけど、研究所は残り二つのアイテムとも共通したキーワードの可能性は高い。


「まあ順番ってある意味盲点だったわよね。RPGでは結構基本だけど、地味に厄介だし、その間にクッションおけないのがこのイベントの難易度を上げてるわよ」

「確かに、その間に一回でも間違うと振り出しはきついよな。ただでさえここはリアルでLROの様な便利機能はそこまでないんだからな。

 リアルに体力がそろそろやばいっての」


 この炎天下の中、どれだけ歩き回らせる気だよ。さっきから良くサイレンの音が聞こえるのは、きっと日射病とかで倒れてる人も居るからだと思う。

 僕達も若いからって水分補給を怠ってると、いつそうなるか分からない状況だ。


「誰もがきっとそうよ。けど、ここで動けてる人達が勝者になれるのよ。無限の蔵はそれを目指すんでしょ?」

「当然。売られた喧嘩は勝って投げ返すのが僕のやり方だ」


 あのハゲ共に好き勝手はさせないっての。



 てな訳で、国立第四研究所に到着。相変わらず錆びれたビルの前には、白衣を着たジジイがいる。僕達はきっとここからスタートで良いはずだ。まずはここで辿った道筋を復習して、それからはシクラの分析に掛かってるな。

 あいつに振り分けさせてるのは、書き込まれるNPCの言葉の数々。それを関連のある奴とない奴、後繋がりを考慮して色々と作業して貰ってる。

 まあ嫌いだと言っても、元がデータみたいな奴だから得意だろきっと。


「さて、ここからが問題よね。どのNPCに次話しかければ良いのか……」


 難しい顔をしてそう言うメカブ。とっとと研究所の奴らとは話して、その後のアイテムを渡した所まで進んでからが悩み所なのは分かってるんだよね。

 ここでどうせなら、もっと分かりやすい奴にアイテムを渡しときゃ良かったんだけど、今更嘆いても仕方ない。


「このNPCと繋がりがあれば良いのよね? どこら辺までを繋がりとするのかも結構疑問だけど……今回はでも、ちょっとヒントになるような事言ってくれたわね。

 もしかして元から二回目の会話まではセーフなのかな?」

「さあな。でもまあちょっとはヒントくれないと、進める物も進めないし、掲示板が無くても出来る様には成ってる筈だろ。

 元から掲示板の存在が入ってる訳無いし」


 一応主催者側はちゃんとイベントこなせる様に作ってる筈だ。ただ足で稼ぐとなるとわかりにくいだけ。リアルで体を動かしてゲームやるなんて、色々と大変な訳だよ。


「まあ、そりゃそうよね。ヤクザとの対立構造は流石に予想外な筈だし。でも一人でここまで気付ってのも無理あると思わなくもないけど……私は天寿が教えてくれるけどね」

「あっそ」


 それならもっと早くに伝えて欲しかったよ。まあてか、もっと早く気付いても良さそうな事ではあった。だって今は僕達リアルに居るんだ。LRO内程、無茶な事が出来ないのは道理。

 リアルなんだから、基本的な人のスペックでこなせるイベントじゃないと、意味なんて無いもんな。それこそバランスを調整するってことが大切な事だとわかる。

 僕達がやってるハゲとの対決はイベントには含まれません。リアルで誰もが出来て、そこそこ難易度もあって、この街全部を使うメリット……それなら会話を繋げての考察は妥当だよ。

 いやね、LRO内では結局最後は力って奴が物を言うし、色々と最近じゃド派手な事が続いたせいで、リアルなのにそう言うのを考えちゃってたのかも。

 最後は人を食うモンスターの襲来か? とか。流石にそれは無いよね。倒す手段無いし。まあそれに本当にモンスターが出てくるフリは今の所無い。きっとそれは僕達が目指してるアイテムの効果かが変な形で現れてると見るね。

 そんな事を考えてると、スマホの中のシクラが画面の中で先に進み手招きしてる。どうやら、次のNPCの検討がついたみたいだな。


「さて、なんだっけ……確か『そう言えばこの街のたまり場たる酒屋に、人を食う通路の事を調べてる人が居るとか』って言ってたな。取りあえずそこに行くか」


 僕はそんな事を呟いて歩き出す。あくまでシクラの事は秘密だからね。自分で検討をつけての行動に見せなきゃな。

 まあでもそこまで言われたら、後は地図ギルドの汗と努力の結晶たるブリームスの地図で確認出来るから、不自然ではないだろう。

 僕のスマホじゃ同時には見れないけど、そこまでメカブは気にしないだろう。


「そうするしかないわよね。てか、アイテムを渡したNPCによってアイテムのルートも聞いていく順番も変わるって……凄い凝りようよね」


 流石にちょっと疲れの色を見せてそういうメカブ。確かにそれは言えてるな。どれだけのNPCが配置されてるか知らないけど、アキバ全体を使ってのイベントな訳だし、四・五十位は居るのかな? 

 まさかその全てに、役割が振り分けられてるとしたら、気合いの入れ方間違ってるよな。いや、それともだんだん独立しかけてるLRO本体には直接干渉出来ないからって、こう言うことに力を入れてるって事だろうか?

 あり得なくはないな。


 そうこう言ってる内に通りを二つ位抜けた先の酒場に到着。てか、ここってドンキ(ドンキ・ホーテ)じゃん。僕はただ単にシクラの後を追ってきただけだからどこか確認してなかったよ。

 まあ分かりやすくはあるよな。そう言えば、ここの上階の劇場は今は何に使われてるんだろう。一昔前は、随分人気のアイドルの活動で熱かったらしいけど、そう言うのの流行なんてせいぜい二・三年が良いところだろうし、僕はそこら辺疎いから良く分からないな。

 まあ基本見る限り、まだ劇場ではあるみたいだけど……下積みをやってるアイドルの活動拠点には成ってるのかな? けど今は名も知らないアイドルなんてどうでも良いんだ。問題はどれが次に話しかけるNPCって事かだ。


「外には見あたらないわね。てか酒場って設定なら中かしら? 言ってみましょう」


 そう言って店内へ急ぐメカブ。アイツきっと冷房目当てだな。まあ分かるけど、どのみち画面の中ではシクラも店内行ってるし、さっさと僕も入るかな。


 店内に入るとお馴染みの曲と商品でごった返した棚がそれっぽい場所だな~と思った。まあどこのドンキも店内はあんまり変わらないよな――とか思ってると、流石はアキバなだけの商品も所々にあったりした。

 僕は基本普通の人だからそれはナカナカにレベルが高い物多数だぜ。


「はぁ~曲がうざいけど、店内は流石に涼しいわね」

「お前な、店内で堂々とそういう事を言うなよ」


 ここのテーマソング。主題歌なんだぞ。店員敵に回す気か。それになんだか耳に残る歌だと思うけど。いやそれがウザいのか?

 ついつい頭の中でループしちゃうよな。ドンドンドン、ドンキ~ってさ。だけどそんな歌とは正反対の映像がスマホの画面には映し出されてるんだから、ちょっとウケる。

 ここは酒場って言う設定らしいけどさ、酒場ってバーなのね。もっと雑多な感じの……それこそ西部劇程度のガサツさが有る感じの酒場かと思ってたら、大人な雰囲気がムンムンの場所だよ。

 商品の棚はお酒にブリームスでは成ってるな。そんな酒の棚の間を進んでいくと、リアルではレジの所がブリームスではマスターが居るカウンターに成ってて、そこに数人のNPCが居る。

 てか、ドンキの店員さんは居心地が悪そうだな。きっと今日は、僕達みたいにスマホを向けて来る人が一杯でウンザリしてるんだろう。

 ご愁傷様とか言いようがない。


「この中のどれかよね? ちょっと見た目じゃわかんないわよ」

「得意の天寿はどうした?」


 こういう時こそ使えよ。まあその必要も無いし、出来ない事も分かっては居るけどね。


「私の天寿は教えてくれてるわ。無限の蔵に任せておいて大丈夫だとね」


 丸投げされた! それに間違いが無い事を言いやがった。本当は僕じゃなく、シクラに任せてる訳だけどね。

 本当に天寿眼なる物を持ってるなら、そこまで見透かして欲しい。まあだけど、その答えは間違っちゃ無いよ。


「際ですか。そこまで信用されてて光栄だ」

「別にアンタじゃ無く、私は天寿を信用してる訳だけどね。そこら辺は勘違いしないでよ。ちょっと私との距離が近くなったからって、調子に乗らないこと」

「はいはい」


 僕は流すようにそういった。だって相手にするの面倒だからね。それにどこら辺で距離が縮まったっけ? 有る程度の距離はあけて置いた筈だけど……同じ人種と思われたくないし。

 まあこんな奇抜な格好してる奴と歩いてるだけで、結構手遅れな気もしないでも無いけどさ……今も店員さんの視線がメカブに集中してるし。

 特に下半身……誰もがそうだけど、下が見えそうだからついつい目が行くよな。激しく動けば絶対に見える。足全部出てるもん。

 だけどそんな視線を気にしないメカブは「ほら、早く」とか言って僕を急かす。僕は画面を見て、シクラを確認。その隣に居る奴が話しかけるべきNPCだろう。てかカウンターの数人じゃないじゃん。引っかけかよアイツ等は。


「どうしてそいつだって分かるんだ?」

「そんなの簡単☆ 話しかける前に対象をロックしてみてよ」


 シクラがそういうから、僕は画面に映る飲みだおれてる男を長押しする。すると輪郭が強調されて、画面に寝言の様な呟きが表示された。

 そこには確かにそれっぽい事呟きが見て取れた。


「多分設定としては、このおじさんの子供もあの通路に惑わされてるんじゃない? だから情報を集めてる……みたいな☆」

「けど、少ししたら戻って来るんだろ。そこまで心配する事か?」


 僕がそういうと、シクラは深いため息をついて、なんか冷めた目で僕を見てくる。


「スオウはちょっと感情に欠けてるね。例えそうだとしても、自分の大切な人が消えたら気が気じゃないよ。私ならせっちゃん消えたら、例え無事に帰ってくると分かってても最悪の可能性って奴を考えちゃう。いてもたってもいられない。

 それが大切って事でしょ? スオウは本当に何が何でもせっちゃん助けたいと思ってるの? そうじゃなかったら、私達には勝てないよ。

 まあ例えそうだとしても勝てないけどね☆」


 バカにしたように笑ってそういうシクラ。こいつに大切って事が何かを諭されるなんてショックだよ。


「元々スオウがセッちゃんをそこまでして助けたい理由ってちょっと謎なんだよね。セッちゃんが綺麗で可愛いからってだけでも良いけど、それだけじゃないよね?

 放って置けないのも分かる。スオウの性格だと、ここまで踏み込んだって事と、後は責任感? ううん、罪悪感? とか? まあ何だって良いんだけどね☆ そこら辺に私は興味ないし」

「じゃあ聞くなよな」


 僕が投げやりにそう返すと、シクラは画面の中でピョンピョン飛び跳ねて、画面に近づく。


「相応の報酬としてそれを要求☆ 興味はないけど、知っておいて損はないでしょ?」

「はは、ホント良い性格してるよお前」


 マジで悪女だな。どこでだって弱みを握ろうとするのな。まあ別にそれは弱みって訳でもないけど……てか自分的にも何が理由とか、沢山有りすぎて良く分からないんだけどな。

 けどたださ、死ぬことを望む……それは一番愚かな事だって僕は知ってる。ただそれだけ。

 第二百五十二話です。

 さてさてようやくイベントへ反撃開始。そろそろ終わりが見えてくてる筈。スオウは何を手に入れるのか。てか、そもそも手に入れることが出来るのか? それはこのイベントが終わったときにわかるでしょう。

 てな訳で次回は火曜日に上げます。ではでは。

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