2507 前に進むためのXの問い編 891
「あれって……」
「あぁ、栄養剤ですよ。2・3日は目を覚まさないと言われてますので」
だから点滴で栄養を補給するみたいだ。なんか点滴が在ると、病院に縁遠い人ほど、なんか重病じゃないか? とか思ってしまうが、点滴はもっと気軽なものらしい。ただの栄養剤みたいだしね。
けどだからっていくら今の栄養食品が進んでるといっても、それでも3日もそれだけで本当に大丈夫なのか? とか思わなくもなかったり……
「えっと……それは日鞠が?」
「はい、それくらいはかかると。大丈夫ですよ。こちらのサポートは万全です。一日に一回、日鞠さんの体調を医師に診察してもらう手筈にもなってます」
「そう、なんてすか」
なんか至れり尽くせりだが、まだまだ疑問はある。
「えっと……ここは?」
それである。この豪邸はなに? 誰の持ち物? この眼の前の人だろうか? なんか幸薄そうだけど、キレイな奥さん……的な感じがある人だ。いや、未亡人感のほうが強い気もする。ならば遺産だろうか?
「ここは彼女の持ち物ですよ」
「え?」
えっと……なんて? 僕は混乱する。彼女? 眼の前の彼女? この未亡人のような女性じゃないよね? だって自分を「彼女」とは呼称しないだろう。ならばこの部屋にいる残りの彼女は日鞠だけだ。
でも理解できない。だって日鞠は学生だよ? 女子高生だ。確かに日鞠はただの女子高生ではないだろう。それは理解してる。けどお金を稼いでる……なんてのは聞いたこと無い。
でも……だ。
(思ったら言わなかっただけで稼いでてもおかしくない……か?)
と思い直す。だって日鞠はいつだって忙しくしてた。でもそれはだいたいお手伝いとか、学校の関係とか……と思ってた。だからお金……とは結びつかなかった。けど日鞠の能力ならお金を稼ぐくらいの事できるだろう。それに疑いなんてない。
でもここは……この豪邸はやり過ぎでは? そもそも日鞠が豪邸をもつ意味ってそんなに無いような気がするし……税金とかさ、かかるってよ聞くよ?
「ここは譲られたものなんですよ。彼女親切でしょう?」
親切……親切でこんな豪邸が譲られるんだ。親切ってすげーな……と僕は思った。
「とりあえず日鞠さんのサポートは私達に任せてください。完璧にお世話します」
「それはありがたいですけど……どうしてそこまで?」
「どうして? それはきちんと雇われてますから」
なんと彼女にとってはこれはお仕事だった。なんか日鞠と関係ある人かと思ったけど……
「関係はありますよ。私も彼女に助けられましたから」
そういって柔らかく笑うその人。その笑顔は今までで一番優しげな顔してた。なんか慈愛というか? そんな感情を感じたよ。