2504 前に進む為のxの問い編 888
「確かに私が言っても不安しかないかもだけど、あの日鞠ちゃんならいつも通り戻ってくるって思わない? そもそもあの子にできない事って思いつかないし。
付き合いが短い私だってそう思うんだよ? よく知ってるスオウならもっと想像しやすいんじゃない?」
「それはそうだけど、それと心配しないのは違うだろ?」
僕のそんな言葉に「確かに」という摂理。それに続いて小さく「羨ましいな」とか聞こえた気がするけど、それは聞かなかったことにした。
「ほかに何か知ってる事は……」
「わかんない。私が帰ってきた時には決着がついてると思ってたんだもん。あんな風になってるなんて思ってなかった。私と会話出来てたのも、システムを浸透させる少しの間だけだったし……」
「浸透?」
「玉座に座ってたでしょ?」
僕は頷く。やっぱりあの大きな椅子は玉座だよな。てかそもそもがあれは摂理が座るべき場所だろう。そんな簡単に誰でも座れるものなのか? ただ座るだけならいい? 確かにリアルなら社長椅子とか言われるものでも、その気になればだれでも座れるだろう。玉座も……リアル玉座が現代にあるか知らないけど、あったとしても、座っただけで何かが起きる……とかないと思う。多分ね。
もしかしたらちゃんとした玉座とか高価そうだし、防犯対策で、王以外が座ったらブザーとかなるとかはあるかもしれない。流石にリアルではいきなりダメージを受けるなんて仕掛けは無理だろうしね。電気椅子とかならできるだろうけど、誤作動して王に発動したらきっとそれを仕掛けた人は首が飛ぶだろう。
物理的に。
なのでリアルの玉座は玉座と言ってもただの椅子であると思う。でもあそこはLROだ。つまりはゲーム。玉座にだって効果を持たせられる。それこそ伝説の勇者の剣よろしく、認められた者以外には座れない……とかである。できない筈はない。
「あれって、普通に座れるものなのか?」
「本当なら私以外は無理だね」
やっぱりか。そういう制約があると思った。けど日鞠は座ってた。きっと妖精王が何かしたか、それか日鞠が玉座のシステムに介入したか……どっちかだろう。日鞠……会長ならそのくらい簡単だろうし。
「日鞠ちゃんがシステムをハッキングしてたのは確実だよ。それにそれをあいつも認めてた」
あいつ……というのはきっと妖精王だろう。
「それにきっと深く月のシステムに入り込む気だったんだよ。そこに自身を投影させるっていうか……そのために徐々に馴らしてた途中だったみたいな? これだって私の想像だけどね」
「確かに色々と奥に行くにはセキュリティとかあるしな。それをかいくぐるために、段階を踏んでた……のはあるかも」
その間の僅かな時間しか摂理は喋れなかったということか。それにきっとその時はコードの方に日鞠だって集中してただろう。そこまで複雑な事を返すことは出来なかったのかもしれない。
「わかった。とりあえず朝になったら日鞠の家にいってあいつが寝てるか確かめる」
「そう……寝れる?」
「……」
僕は答えられない。あいつは大丈夫……そう思ってるが、不安なのも確か。すると摂理がコントローラーを差し出してきた。
「付き合ってよ。朝までに二人で世界ランクに到達しよう!」
「結局ゲームか」
「気晴らしにいいでしょ?」
そんな事を言ってウインクする摂理。ちょっとドキッとしてしまった。