2498 前に進むためのXの問い編 882
「なんで……」
「不思議、あり得ない、という顔だな。祝福があるから見破れると思ったか?」
その妖精王の言葉に僕は顔には出さないが、かなり驚く。だってコードってNPCにはわかりえないことだ。ゲームである証といってもいい。それをこいつはわかってるのか? いや、祝福という力をこの世界の人でもわかるように理解してるのかもしれない。それこそ、祝福と言う名だからこそ、神のご加護みたいなさ。神の加護があるから色々と精神系のなんやかんやは効かないとか。そういう位の理解なのかも。それかこの世界の真理が見えてる……とか。真理が何かなんて僕もわからない。けどコードなんてものはわからないだろう。だからこそ、真理。この世界を構築してる約束というか、文体というか? だからそれを見れるのはある意味でこの世界の真理を見てるといえるのではないだろうか?
けどそんな心理をもってしても、妖精王に騙された。本当に騙されたのか? コードが嘘をつくなんて事は、これまで一度もなかった。でもいくら見ても、目の前に妖精王はいる。僕は周囲にも目をそらす。一体どういうことなのか……さっきまでの戦いが全て幻だったなんて……僕の目が騙されるなんて……僕の自信はスピードとこの目だ。自分でもおかしいと思う事もあるほどに僕のこの目は進化してる。だからこそ、いまだに信じられない。見落とすなんてことがあり得るとは思えない。
だってアフターケアだって勝手にやってくれる程の目だ。速い敵は遅く見えるし……というかなんだったら止まって見えたりするし、気を付けないといけないところは縁取りとか、強調表示してくれたりもしたりする万全な目である。おかしいよ。おかしいけど、頼りになるのも確かだっだ。けど……今回は何もなかった。確かにめっちゃ速く動いてた。それでも自分が敵を見失うなんてことがないのはこの目のおかげだ。それだけこの目には信頼があるといっていい。
そこで僕は思いつく……
「いつからじゃない。最初からか?」
その僕の発言に妖精王はその綺麗な顔の口を大きくあけて「アッハッハッハ」と笑った。そしてパンパンパン――と手を叩く。天井を仰いでそしてそのまま、こっちを見下すように見てくる。
「その通りさ。何が正しくて、何が間違ってるのか。初めての場所なら判断のしようがないだろう?」
その通りだ。初めての場所。何か違いがあったとしても、それに気づくなんてのは不可能だ。だって初めての場所なんだから。これが普通だって……ここではこういうものだって思う。コードだって、こういうものだと思うだろう。実際スキルか何かで僕たち全員を包んでたりしたのなら、それでも僕の目は……祝福はそのスキル名を見つけたはずだ。けどそうじゃない。ならばこれはきっと個人のスキル……とかではない。ただの街発展形のゲームのシステムを取り入れてるってだけじゃなかったんだろう。
きっと僕たちにこの幻覚を見せてたのは『月』だ。月そのもの。それこそコストを払ってそれをなしたと考えれば辻褄が合う。なにせコストという概念があったんだ。それを使って何ができるのか。僕は全てを把握してなかった。だからこういう事も出来るかも……の考えに至らなかったんだ。ただ月の街を発展させていく系――だと、勝手に思い込んでしまった。僕は自分の失敗が悔しくて強くフラングランを握りこむ。