2497 前に進むためのXの問い編 881
僕は息をさせないほどに激しく攻め立てる。一度だって反撃の芽を許しちゃいけないと思ってるからだ。なにせここは月だ。妖精王のホームだ。一度形成を建て直されたら、絶対に厳しくなるとわかってる。ならば……それをさせずに終わらせるのが最善だろう。
うまくいってる。なにせ妖精王は防戦一方だ。このまま妖精王のHPを削り切る。そのあとにもしかしたらレシアとかセツリが出て来るかもしれないが、そんなのは関係ない。会長を椅子ごと奪取してでも、地上に戻る。この場所じゃなかったら、きっと会長だって目覚めるだろう。
多分……おそらく……アンノウンという表示がきになるが……でもそれしかない。僕は夢中だった。ただがむしゃらに動いて、斬って、切りまくる。妖精王のHPは赤に突入してる。
絶え間ない斬撃の嵐に、踊るようにも見える妖精王。
(終わりだ!)
僕は最後にフラングランを妖精王の胸に突き刺した。そして二つの刺さったフラングランを開け放つように両横に開いた。ゲームじゃなかったらかなりグロい光景になるだろう。
けど血の表現がないから、妖精王の体が不気味に分かれる感じになってる。そしてオブジェクト化して消えて……
「はあはあはあ……」
やりきった。完全に削りきった。僕はようやく息をした。いっきに入り込んでくる空気。いや空気じゃないのかもしれない。だってここは月だし。でもじゃあ何を吸ってるのか? と言われてもわからない。とりあえず呼吸がしたことで落ち着いてくる。
この間たった数秒くらいだ。でもその数秒に全てを出し切った気分だ。今まで一番早く……そして一番激しかった数秒かもしれない。
「いそ……いで。かい――ちょうを……」
うまく言葉を喋れない。呼吸が整ってないからだ。まだ安心はできない。だってまだセツリたちはいるんだ。だから早く……僕は再び足に力を込めた。その時だ。
「いい夢は見れたかな?」
僕は踏み出せなかった。なぜなら、眠ってる会長の椅子の隣に妖精王がいたからだ。それも……全くダメージを受けてない状態で……だ。一体どうして?
「混乱してるね。夢……はおしゃれに良い過ぎたかもしれない。いい幻はみれたかい? 私を倒せたかな?」
幻? 今のが? いや、コードを見れる僕に幻は効かないはずだ。だって幻なんてコードをみたら一発でわかる。だからそんな訳……でもそう思うも、確かに妖精王はそこにいて、そしてコードを見る限り、こいつは本当の妖精王だ。